映画「グレート・インディアン・キッチン」、家庭内のジェンダー問題を描く優れた作品

 観てきました。ジェンダー視点の映画、いろいろある中でも、秀逸な作品です。

tgik-movie.jp

 

 大卒のインド女性が婚家で延々続く無償ケア労働に明け暮れ、夫と舅の悪意なき抑圧に疲れ果てる話です。格式あると言えば聞こえはいいが「古い」婚家では生理中の女性は不浄だから料理をしてはいけない。男性が宗教儀式を行う期間は触れてもダメという慣習が残っています。

 抑圧された挙句、立ち上げる女性を描く作品がたくさんある中で、この映画が素晴らしいのはヒロインが「つらい」「悲しい」「苦しい」「なんで私が」「家事から解放されたい」といった感情を言葉にしないところです。こういうのは、文字通りしゃべってしまうと、Twitterになってしまう…。

 彼女がこの家の男を言葉で批判するのは一度だけ。他は全て延々続く料理の下ごしらえ、食事や台所の後片付け、美味しそうでカラフルな食材を様々な角度でうつす。死ぬまで終わらず、生理の日しか解放されない労働であることが伝わってきます。
 描き方として上手いのは、登場する男性すべてが「くそ」ではないこと。主人公の友人夫婦は現代的な住居に住み、料理は夫がやっています。コミュニケーションも全然違う。この映画の監督も男性ですから、インド男性もいろいろなのです。あと暴力を振るわないところ。伝統的ではあるけれど、酷いと一刀両断にできない程度にひどい奴らがリアル。
 日本の田舎にも似たような光景は残っているから、そりゃあ、未婚少子化が進むに決まっているよね…という話を夕食作りながら食べながら、当然、うちでは男も女も全員動きながら話して聞かせました。