フィリピン出身きょうだいの進路指導を巡る問題を描く研究書

 ある関西の中学校に通うフィリピン出身のきょうだいが、特別支援学校に進学する過程を、彼らを支える母親、中学校の教員たち、通訳を担った人物などの語りで浮き彫りにしています。

 書籍タイトルへの答えは、終章近くで明確になります。包括的移民政策を持たず、それゆえ外国人・外国ルーツを持つ子どもの支援が全く足りない構造が、教育現場で苦肉の策として特別支援学校への進学を方向づけることにつながっていく、というわけです。
 辛いのは先生たちが、子どもをほったらかしにしたり、意地悪をしたりして、進学先を方向づけているわけではないこと。言葉がうまく伝わらない中でも、周囲の子ども達が様々な手助けをするし、課外活動を一緒にやり、彼らの良いところを伸ばそうとする先生もいます。
 本書を途中まで読んだ時、はっとしました。多数派のありようを変えようとせず、少数者だけに代わることを求めるのは、教育に限らない、と。日本の組織で女性活躍が遅々として進まないのも、多数派を占める「男性的働き方」を変えずにきたからです。ごく少数の男性的に働ける女性(昔の私もその一人)だけを仲間に入れても、管理職女性3割なんて達成できるわけがない。
 さらに大きな問題は、日本女性に対する支援は様々な法律で規定されているけれど、外国人児童やその保護者にあたる外国人労働者への支援は、おそろしいほど何にもないということです。
 著者の京大大学院での修論を書籍化しています。「はじめに」の一段落目を読んで泣きそうになりました。