現代にも通用する100年前の主張:社会主義フェミニスト・山川菊栄

 最近、ジェンダーフェミニズムへの関心が広がっています。ただ、TwitterなどSNSしか見ていないと、いろいろ誤解しがち。そもそも女性解放って何を目指していたのか知りたい人にお勧めしたいのが、山川菊栄の著作です。

 山川菊栄(1890~1980)は初期における日本フェミニズム理論を構築した人として知られていて、切れ味鋭い原稿の数々は100年以上経った今でも新鮮です。例えばこんな具合。

「私は男子を妻子扶養の具たる運命より解放するとともに、女子を家庭より解放し、男女相携えておのおの自己の適する社会的労働にも従えば、子女の養育にも任じ得る社会の実現を希望する」『山川菊栄集・評論篇:第一巻 女の立場から』(岩波書店)P173
引用部分は1918年のもの。100年以上前です。
 本の帯に「日本のフェミニズムの思想的原点」とある通り、女性労働、性と生殖に関する健康と権利、結婚のあるべき方向など、現代に通用する内容です。国内外の統計を引用したり、ある制度の導入前後で数字を比較するなど科学的な書きぶりで説得力が高い。
 菊栄も夫の均も社会主義者で、戦前は特高に自宅を見張られていました。知人のアナーキスト大杉栄伊藤野枝関東大震災の混乱に乗じて殺害されており、山川夫妻も間一髪で難を逃れています。
 戦後、菊栄が厚生省の労働局長を務め、その主張が今では選挙制度、労働法制、男女共同参画社会基本法などによって実現されていることを考えると感慨深いです。もしかしたら、現代の社会主義者の主張を学んでおけば、半世紀後の未来を予想できるのかもしれません。