老齢の親に生きていてほしい子どもの気持ち、頑固に死にたがる父への苛立ちと、本人の意思決定を尊重しようとする娘の姿が説得力を持って描かれる。
ハリウッド映画なら、ここで、父が考えを改めるんだけどな…というシーンがいくつもありますが、これはフランス映画なのでそうはいかない。ずっと青い服を着ていた主人公が1回だけ赤を着るシーン、「食べかけのサンドイッチ」の扱いなど、小物に心情を語らせるのもうまい。
シリアスな題材を扱いつつ「安楽死は是か非か」というマクロで遠い議題設定ではなく、あくまでも個人の行動と心情に焦点を当てているのが良い。日本でも同じ課題に直面している人は少なくないはずで、何も解決しないが救われるところの多い映画です。