今日はジリアの英語レッスンだったので、IRBの書類記入が面倒だと話した。

彼女も自分の研究のため、これまでに3回、審査を経験したそうで、記入にあたって使えるフレーズを教えてくれたり、色々アドバイスしてくれた。ネイティブの彼女でも書類の準備には丸2日かかったという。

面倒な手続きを踏む理由のひとつは、一般化へのこだわりのようだ。「アメリカの研究者は、ある研究の結果が一般化できるものであるかどうかを重視する。例えば『30代の女性は黄色い帽子をかぶっている人が多い』と結論づけるためには、調査対象が30代女性全体の傾向を反映したものでなくてはならない。サンプリングが充分か、バイアスがかかっていないかをチェックするために、あれこれ尋ねられるのだと思う」と聞いてなるほどと感じた。

確かに、書類の記入項目に「あなたが対象にしようとしている人の選び方は、その研究テーマについて客観的な結論を得るのに適切だと言える理由を書きなさい」といった趣旨のものがあった。

私が使える時間は数カ月と短いし、サンプル数もそれほど多くないので、もとから客観的なデータを得ようとは思っていない。共働きカップルの傾向や成功事例を日本に持ち帰って参考にしたいという程度である。

同じようなテーマの調査を本職の研究者がやった結果をまとめた本や論文を見ると、数年の時間と2人以上のリサーチアシスタントを使い、研究費助成をどこか財団などから得て100人前後に各数時間のインタビューをしている。一応「本当の研究者」がどんなことをしているのかをチェックした後では、インタビュー結果を簡単に"一般化"しようなんてことは考えません。

それなのに面倒な手続きに巻き込まれてしまったのは、調査結果を所属機関であるCEWのリポートとして発表する予定があるためだろう、とジリアが教えてくれた。CEWはミシガン大学の内部機関なので、調査手順に問題がないかどうか、大学としてチェックしておきたいようだ。要するにリスクマネジメントである。

何だか官僚主義的な気もするけれど、こういう組織の論理みたいなものを垣間見られる機会はそうないし、このところ良い天気が続いていて、木々が美しく色づいている(写真)のを見ると「まあ何でも、いいや」という気がしてくる。