昨夜は滞在しているFranklin&Marshall Collegeで「日本女性の地位がどう変わったか」について講演をした。


大学生、教授、地域住民の方など約68人も聴きに来てくれて驚く。人目を惹くポスター(写真)のおかげかもしれない。


質問もたくさん出た。覚えている限りではこんなやり取りがあった。アメリカ人が日本のどんな部分に関心を持つか分かるのでざっと記してみます。


Q「男性と女性の賃金の差はどのくらいか」
A「およそ100:60だが、これは就いている職が違うためだ。私は同僚の男性と同じ賃金をもらっている」

Q「外国人女性は日本でどんな扱いを受けるか」
A「英語を話す人は基本的に丁寧に扱われる。英語圏以外から来た外国人は差別されることが多い」

Q「なぜか」
A「人種差別意識と、特定の国から来た女性が性産業に従事することが多いため偏見が生まれやすい」

Q「もし政策決定者になったら何をするか」
A「全ての企業に従業員数や管理職・役員数と男女の内訳、産休や育児休暇を取る資格のある人の数と実際に取った数を公開義務付けさせる。若い人は賢いからデータを見れば、どの企業が本当にワークライフバランスが可能か分かるはずで、情報公開が一番大事だ」

Q「女性が進出することを男性はどう考えているのか」
A「いわゆる成功したビジネスマンや経営者からはポジティブなコメントが多い。でも、ビジネス界では競争が厳しくなっているので、かつては女性が担ってきた低賃金の仕事を男性が担うこともある。こうした男性の中には政府がポジティブ・アクションを取ることを逆差別だとして怒る声も多い」

Q「年齢が上の男性は女性の社会進出をどう見ているか」
A「あまり歓迎しない人も多い。彼らの妻は大半が専業主婦であるから、そうしたライフスタイルが良いと思っている。私の母も専業主婦だった。中学高校の間は毎日手作りのお弁当を持たせてくれた。私が将来子供を持っても、ここまで出来そうにない。主婦の価値を主張する人の気持ちも分かる」

Q「日本ではどんな育児施設が使われているのか」
A「公立の保育園を使いたいと考える人が多い。アメリカに比べると、日本人の方が公的なサービスを好むように思う」

Q「女性の進出が進んだら、かつて母親が果たしてきた役割は誰が果たすのか」
A「理想を言えば男女共に外で働き、家事も分担するようになってほしい。また、子供を育て上げた主婦世代がビジネスとして料理や育児をやれたらいいと思う」

Q「男性が育児休暇を取った場合、収入減になるから難しいのでは」
A「その通りだが、ある試算では育児休暇中の給与を100%補填しても、財政にそれほど大きな負担をかけないという結果もある。100%出してもいいと私は思う」

Q「ハーバード卒の雅子妃について、日本の女性はどう思っているのか」
A「ワーキングウーマンの大半は同情している。彼女が結婚した時、多くの人が大使のような役割を期待した。それはかなわないので、彼女の能力がもったいないと思う」

Q「アカデミアはどうか」
A「依然として保守的だ。『女性は結婚すると職を得られない』という話がいまだにある。メディアとアカデミアは日本語の壁に守られているから、国際競争をしていない。一番保守的な業界だ」

Q「ランキング上位校でも女子学生は増えているのか」
A「東大のデータは今ないが、私の出身校は3位くらい。10年前は女子学生比率が25%だった。今は50%になっている」

Q「同性愛についてはどんな論議があるか」
A「米国と比べると話題になっている度合いは少ない。渡米して8カ月でレズビアンやゲイの友人・知人が出来た。日本では同性愛であるとカミングアウトしている人は友人・知人はいない。今後は話題になるかもしれない」

Q「あなた自身は管理職になりたいか」
A「インタビューをしたり署名記事を書いたりする今の仕事が好きなので、管理職になりたいとは思いません。でも、本当は昇進したいという野心を持つべきなのかもしれません」


講演終了後に話しかけてきた人からは「祖父は太平洋戦争中に海軍に入っていて、いまだに日本人が嫌いだという。日本の元軍人もやはりアメリカ人が嫌いか」とか「日本女性にとって、一番お手本にしたいのはどこの国の女性か」と尋ねられた。なかなか面白いので、それぞれに私の意見を話した。

"女性"を切り口にした日本社会の変化に、みなさん興味を持ってくれたようで、とても嬉しかった。