著者が勧める育児は、現状を大きく変えるものではありません。目指すのは今よりちょっとリラックスした育児。例えば土曜の午前中に無理に出かけるより、子どもはのんびりDVDでも見て、親は親で好きなことをすればいい。この程度のことで子どもの将来は変わらない。親は全てを育児に捧げなくてもいい。好きなことをしても罪悪感を覚えることはないというのが、本書の趣旨です。今よりのんびりと、早く言えば手抜きをして育児しても子どもに悪影響はない。これを科学的根拠をもって理解することで、育児のコストは予想外に低いと分かり、親はもっと多くの子どもを持てるはず…というのが本書の趣旨です。
このような主張はともすると「育児の大変さを知らない父親の勝手な言い分」と受け取られるかもしれません。しかし、本書に散りばめられた、著者自身の育児(双子を含む4児の父親です)エピソードからは、カプラン教授が決して「育児をしてないイクメン」ではないことが分かります。夜中の授乳やおさまらない夜泣きや、誰かがオムツ換えを求め別の誰かがお腹が空いて同時に泣き出す…こういう状況を著者はどっぷり経験し、自ら手を動かして対応してきたようです。
大変な新生児の世話が「育児のコスト」なら、やがてコミュニケーションが取れるようになった子どもと遊ぶ楽しみこそが「育児の報酬」。その報酬を最も実感するのは、退職して時間ができた時、どれだけの子どもが訪ねてきてくれるかである…この発想、乳幼児と暮らす私はとても共感しました。