政権交代してよかった、と思うが、あることに、とても失望している。


保育所の国による最低基準撤廃の動きだ。


待機児童を減らすため「地域の実情に合わせて」保育所を増やすのが目的といわれている。


そうではない。育児の実情を知らない政治家が、成果を急いで間違った規制緩和を進めているのだろう。現場を全く見ていない。


仕事に復帰する前、いくつかの保育園を見学した。公立は総じて施設が充実していた。しかし、私立の中には、劣悪な環境の園もあった。そこを見学した帰り道、夫と並んで歩きながら、どちらも無言だった。あまりにひどい環境がショックだったのだ。こんなところに入れるくらいなら、保育園には入れず、ベビーシッターを頼もうかと思った。おカネは4倍以上かかるが、いたしかたない・・・。


結局、キャンセル待ちの順番が繰り上がり、私立の良い保育園に入ることができた。そこは超人的にモチベーションの高い園長先生によって運営されている園だった。その後、転園して今は公立に通っている。

半分のスペースで仕事をしてごらんよ


もし、国の最低基準が撤廃されたら、私たちが「いやだ」と思ったような保育園が増えることだろう。その結果、何が起こるか。


待機児童は減るかもしれない。しかし、ふたつの犠牲を払うことになる。ひとつめは女性労働力だ。私と同じように「こんなところに入れるのは可哀そう」と仕事を諦める人が出てくるはずだ。ふたつめは子どもである。「ここは嫌だ」と言葉に出して言えない子どもたちが犠牲になる。


待機児童が多いのが問題なら、根本的な解決策は、質の高い保育所を必要な分つくることだ。専業主婦家庭との公平性が問題になるなら、平日、主婦が子連れで集まれる場も作るのがよい。それができないのは、財政難だからであり、財政難になったのは、これまで、バカなことにカネを使いすぎたからだ。その選択をしたのは、一定以上の年齢の人々ではないか。


本件に関わっている官僚や政治家に言いたい。あなたのオフィススペースを半分にして、質量ともに同じ仕事をしてごらん。部下を、秘書を減らしたら、仕事にどんな影響があるか試してみたらいい。官舎に住んでいるなら、その広さも削ってみたらわかるだろう。保育園の施設が小さくなり、担当の保育士数が減るというのは、ものを言えない子どもから見たらそういうことだ。

実は分かっていない市場主義者たち


ビジネス誌の記者を10年近くやってきて、アメリカに1年住んでみた結果、私は市場原理主義者になった。大抵の規制は緩めるかなくした方がいいと思っている。しかし、保育所問題については何か釈然としない。ヘンな会社に入ってしまっても、大人なら辞めるという選択肢がある。でも、ヘンな保育園に入れられた子どもには、辞める自由はないのだ。


保育所もやっぱり、規制緩和で市場化した方がいいの?」と経済学者の夫に聞いてみた。夫は私以上に市場を信奉している。彼の答えはこうだ。


「中途半端な規制緩和は最悪だよ。経済学の基本で、こんなのは大学1年で習うけど、世の市場主義者の大半は、全然分かってないみたいだね」。どういうことか。続きは後日。