まだ保育園に入れるかどうか決まってないのですが、予定通りいけば4月に復帰。


この数カ月、家に主婦(=私)がいる状態に慣れていて、色んなことがすごくスムーズでした。宅配便がいつきても受け取れる。夕食は明るいうちから仕込んでおき、家族が空腹で帰ってきたらさっと出せる。ゼロ歳の娘がおっとりした性格で、育児がラクで、夫が上の子と向き合う時間があるからこその余裕であって、ここに4月から私の仕事が乗っかってくるなんて信じられない。こんなんで回るのか?と心配しているところです。


これまで、夫は、仕事はしていましたが「未来につながるキャリア」をほぼ投げ打って子どもに対応してきたのですが、さすがにそろそろやばい。せっかく希望の仕事に就いたのにこれでは勿体ない。私も一定の責任が伴う会社員を続けるなら、家のことを今のようにやるのは無理。ということで、春からは家事サービスを週2回頼もうかーと話していた矢先こちらのブログを読みました。


色々考えたら眠れなくなりました。


働く親が抱える課題については、色んな本や雑誌や論文を、海外ものも含めて読んできました。共感することが多いけれど、不満もあります。いつもいつも言われてることが一緒だから。20年くらい前に書かれたものも、大体、似たようなことを言ってます。何で解決しないのか。何でいつも同じ話が出てくるのか。何で堂々巡りしてるのか。


ひとつの問題は、レベルの異なる課題をごっちゃにして「(働く)ママは大変」と論じているところにあるのではないか。実は働く母親/父親のニーズも色々あって、解決アプローチは異なるのに、ちゃんと考えてこなかった。働く母親の大変さを、「母=女=弱者」という昔ながらの発想で論じている限り、私たちのもやもやは解消されない、と思いました。「完全な福祉」と「公共サービス(補助金市場)」と、「普通の市場」、それぞれが提供できるモノを分けて考えるべきではないでしょうか。


とりあえず、(働く)母親が欲しいものについて、価格という観点から3つに大別してみます。

1)市場価格を払っても、欲しい人がいる

ある種の家事サービス。ブログでさいとうさんが書いているような、ソリューション提供型のプロの家事サービスです。


我が家では週に1〜3回、食事つくりをお願いしています。払っている金額は大学生の家庭教師相当で、決して安くはありませんが、子どもにはまともな食事をさせたいし、外食より美味しくて家で食べられて元気が出るので、大人も満足しています。


家事サービスといった時、家庭によって頼みたいことは掃除だったり洗濯だったり料理だったり、子どものケアだったり色々ですが「きちんとした主婦仕事を頼めるなら市場価格払ってもいい」と考える人はいる。ここでの課題は、さいとうさんのブログに書かれているように人材難です。特に、夕方〜夜の時間帯に頼める人が見つからない、ということでしょう。我が家も食事作りを任せられる方を見つけるまで約1年間、思考錯誤がありました。


需要はあるし市場価格を払いたいと思っている。それなのに供給過小なのだから、本来なら担い手が参入してくるはず。阻んでいるのは外国人労働者に対する規制でしょうか。こんな具合に考えると、ここでの解決策は規制緩和ということになるかもしれません。

2)公共サービス市場

利用者の自己負担に加えて補助金が入っている市場、例えば認可・認証保育園がこれに該当します。


私自身はあまり賛成しませんが、待機児童解消のためには、補助金をカットして保育園の利用料金を上げれば良いという考え方もあります。現在の自己負担額は必要コストの数分の1、残りは補助金で賄われています。補助金があるせいで、自己負担額が安くなりすぎ「この価格なら自分も欲しい」という人が列を作ってしまう、という発想です。


保育園不足問題への取り組みは、社会が子どもをどう位置づけるかによって違います。もし、子どもは社会の未来を作るから、皆で支える…と考えるなら、親だけでなく社会のお金=税金を使って保育園を運営するのが良い、という結論になる。一方、子どもを作るかどうかは完全に個人の問題と考えるなら、育児は自己責任、保育園に補助金はいらない、という結論になるでしょう。


保育園が足りない、待機児童が何万人…という報道を見るたび、そもそも、子どもは社会にとって何なのか、子育てコストはだれが負担するのか、根本の議論をもっとすべきだと思います。ちなみに、社会が子育てコストを負担しない場合は、今やっているように現役世代がリタイア世代を支える賦課方式の年金を正当化することはできませんよね。

3)完全な福祉

児童虐待の防止や育児鬱への対策がこれに該当します。

このレベルの問題に対応するため、税金を投入することを嫌がる人は、そうそういないでしょう。


予算の制約や社会の意識によって、提供されるサービスは異なりますが、最近、少しずつ変わってきている感じはします。私が住んでいる自治体には、幼稚園入園前までの子どもが誰でも使える屋内遊び場があります。広くてきれいで玩具もたくさんあり、授乳室なども充実しています。先日、下の子を連れて行ってみたら、上の子を連れて3年半前に行った時より、スペースは広がり、職員の方の対応がさらにきめ細かくなっていました。


やたらと親切で親身になって歓迎してくれるのを見て、これは、育児ノイローゼになりそうな母親への配慮なんだなと思いました。


長々と書きましたが、1)〜3)では、少しずつ、でもだいぶ違うと思いませんか。ひとくちに「育児支援」とか「働く母親支援」といっても、ある課題の解決には規制緩和など市場主義的対応が、別の課題については財政支出の拡大という大きな政府的な対応が望まれる。母親の課題、働く母親の課題を本当に解決するためには、課題の構造をひとつずつ解きほぐしていく必要があると思います。何となくぼんやりざっくりと「女性の社会進出」とか「育児支援」とかを論じていても、当事者には役に立たないのです。