世界経済フォーラムが2006年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。


調査対象115カ国中、日本は79位。もちろん、G7で最下位だ。この種、男女もの国際調査で日本の順位はいつも低いから驚きはない。でもいくつかの国々より順位が低いことは信じがたかった。例えばコロンビア(21位)やタイ(25位)では農村部の女性たちが「良い働き口がある」とだまされて日本に連れてこられた結果、強制売春させられている実態がある。このように貧しい国から近隣の豊かな国へ、女性が人身売買される例は世界中でみられる。日本女性はこうした国々の女性より差別されているというのだろうか。

納得がいかないので、世界経済フォーラムのウェブサイトからリポート全文をダウンロードして(写真)調査基準をチェックしてみた。するとこの調査は「各国内における男女の地位の差」を比較したものであることが分かった。国別に女性の地位を比較してしまうと「国の開発度合いに即した順位付けになってしまい"男女差別"について正確な状況を捉えにくい("The Global Gender Gap Report 2006" p.21)」というのが、この調査方法を採用した理由だ。


調査項目は4分野ある。健康、教育、経済、政治だ。それぞれの分野で男性が利用できるリソースに対して女性はどのくらいアクセスできているか、女性が占める割合はどの程度かを元に指標化してある。健康について、日本は1位である。もっとも同着1位が34カ国もあるが。教育は59位。足を引っ張っているのは経済・政治的地位に関する指標で共に83位となっている(同リポートpp.10-11)。


日本の順位が特に低い経済・政治分野について何を根拠に順位付けしているのかさらに詳しく見てみた。経済については同種の職に就いた場合の賃金格差や女性の管理職、専門職割合が、政治については議員や閣僚に占める女性割合がを評価していることが分かった。確かに日本は諸外国と比べてこうした分野に占める女性割合が低すぎる。リポートの要約版(上に貼ったリンクの"Highlights"を参照)には、世界各地域の傾向が書かれている。けれど「アジア・オセアニア」の項目に日本に関する記述はない。順位も低いしどうでもいいのだろう。


最初「日本が79位」と新聞のニュースサイトで見た時、とても不快だった。欧米の研究者が自分たちに都合の良い手法で調べたのだろうと思ったためだ。日本語が読めない研究者が断片情報だけで「日本では女性の地位が低い」と言うのを聞いて腹を立てたことが少なくない。調査にあたったのはハーバード大ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授らだが、調査結果を見ると米国(29位)も英国(12位)もそれほど順位が高いと言えないので、私が当初抱いた苛立ちは的外れだったことが分かった。


実のところ私は最近、日本で仕事をしていて「女だから」嫌な思いをするということがほとんどなくなった。たまに年下の女を見下した態度を取る男性がいるが、可能な場合は本人に面と向かって文句を言う。言えない時は記事のネタにしてしまう。日本の場合、女性の経済的地位が低いといっても好きで主婦になる人もいるしなあ・・・と複雑な気分ではあるが、それを数値で測って見せない限り、外国の人には分かってもらえないのである。