全米の囚人に占める女性割合は7%、10万7000人。


今日聞いた講演によると、1990年から2005年にかけて女性の囚人は150%に増加している。発表者はミズーリ大学カンザス・シティー校のクリスティー・ホルジンガー准教授


女性犯罪者たちの3割が薬物濫用を理由に投獄され、窃盗などが3割、暴力犯罪が35%。盗んだり暴力を振るうのも薬物目的なので、ようするにドラッグが最大の問題といえそうだ。


彼女たちの特徴は低学歴で失業率が高く、収入が低く有色人種が多いこと。約半分がアフリカ系だという。ホルジンガー准教授がオハイオ州の女性受刑者を調べたところ、家族に投獄歴のある人が8割、性的虐待を受けた人は6割、そして8割近くが自傷や自殺未遂経験を持つ。家庭環境に問題がある少女が家出をして、食べていくために犯罪に手を染めるという分かりやすい構図が見えてくる。


大学町で接する「良きアメリカ」と反対の面が垣間見えた。私がふだん付き合っているのは恵まれた層のアメリカ人で、彼らと話していると、独立心や前向きさ、政府に頼らず「できることは自分たちでやっていこう」という姿勢に感心することが多い。ただ底辺の方を見ると、日本の方がましなのではと感じる。


法務省によると、平成17年に日本には4694人の女性受刑者がいた。全体に占める割合は約6%。同年の女性新受刑者について罪名を見ると覚せい剤取締法違反が35.2%で1番多い。次は窃盗で29.7%。こうした数字を見るとアメリカと状況がよく似ている。大きく違うのは受刑者の数で、アメリカは日本の約20倍。人口当たりで見てもアメリカには日本の8.6倍の受刑者がいる。


講演を聞いていて、10年前、大学時代の刑事政策のゼミのことを思い出した。そこでは刑務所を見学し、元受刑者や死刑囚の弁護人の話などを聞いた。刑務所内では相当、非人間的なことが行われていたのが分かったので、名古屋刑務所の事件を聞い時も驚きを感じなかった。そうして日本の刑務所の問題点も理解した上で、やはり、アメリカの現状はばかげていると思う。本来なら福祉政策の対象になるべき多数の人を刑務所に入れているのだから。