土曜に見たが、前評判通りのすごい映画だった。


第二次世界大戦ニューギニアに従軍し、撮影当時は神戸でバッテリー商を営んでいた奥崎謙三氏が主人公。戦後すぐにある部隊で上官の命で部下2人が射殺された。死因を不審に思った遺族と共に、奥崎氏は元戦友や上官の元を尋ねる。そこで明かされた戦場の実態とは---。というのがストーリーだ。


ラスト近くで明かされる事実は、現代に生きる私には想像もつかないことで、戦争にロマンチックなイメージを抱くような人に是非見てほしいと思った。


ただ、いわゆる「戦争の恐ろしさ」の他にも印象に残ったことがある。本当のことを知るのは難しく手間がかかるということだ。最初、奥崎氏が尋ねていくと、戦友や上官は話をはぐらかす。重い口を開いても話す内容は各人で食い違う。40年近く昔の話であり、誰もが思い出したくない悲惨な状況だから、人によって記憶違いがあるのも無理はない。さらに、皆が少しずつ自分自身や別の誰かを慮ってウソをついたり、核心部分を話さなかったりする。奥崎氏がしつこくしつこく問い詰めて、1度ならず2度以上、遠路を訪問して初めて本当に何が起きたかが明らかになる。


メディアの仕事に携わる多くの人は、この映画を観て自信をなくすと思う。真実は時間と手間とエネルギーをとことんまで投入して初めてわかるのだ。私は呆然とした気分になった。インタビュー対象の置かれた状況が全く違うとはいえ、ちょっと数十分、数時間、人の話を聞いたくらいで記事を書いていいものだろうかと、考えてしまう。


原監督によれば、試写会で好評を博したこの映画の「上映を検討したい」と日本の大手5社が申し出たそうだ。ところが、実際に観た後は皆「申し訳ないが上映できない」と断ってきたという。理由は、一様に「これを上映すると右翼が映画館の周りを取り囲んでしまうから」だったらしい。