前回に引き続き Chronicle の最新(2007年6月15日)号より。


「そもそも"2.0"とか新語に飛びつくなよ」という意見もあるだろう。ただ、この記事のテーマは技術の変化が今後の研究活動に与える影響であって、消費を煽るのが目的ではない。一応、目を通す価値はあるように思った。


筆者はMichael Jensenジョンズ・ホプキンス大学の出版部門で電子出版を手がけた後、現在は全米科学アカデミーなどでウェブコミュニケーションのディレクターを勤めている。


Web2.0」という言葉を広めたTim O'Reilly は昨年のインタビューで「Web 3.0は当分想定していない」と話しているが・・・。


記事によると"3.0"においては、論文を掲載した学術誌、査読者の"prestige"を測れるようになるそうだ。


方法はこんな具合。論文執筆者自身が所属する機関の格はもちろん、論文の引用のされ方やインターネット上でリンクする人の価値を測った上で、リンクの貼られ方を評価をする。ブログなどでどんな評価が書き込まれたか、肯定的か否定的か含めて検証。論文執筆者がほかにやった仕事(論文の査読など)も評価する。大学の講義などで「必読リスト」に挙げられているか、も考慮するそうだ。


こういうことは、"2.0" の現在でも、ある程度は可能だ。分野ごとの学術誌ランキングがあるし、きちんとした学術誌に載った論文は、Google Scholar大学図書館を通じてPDFで手に入る。インターネットには論文の引用件数を調べられるサイトもある。


米国の大学に限れば、上位50校の教授たちはCVをインターネット上で公開しており、これには査読付論文や研究助成金の獲得実績を記してある。CVを見れば、その人がどんな仕事をしているか(またはいないか)は一目瞭然だ。ある分野の論文を2つ3つ読み、参考文献まで読み進めれば、頻繁に引用される論文や書籍、筆者は自ずとわかる。CVには博士論文の指導教官が記してあることも多いから、ある研究者が誰の影響を受けたかを知るのも難しくない。


ただ、高速インターネットと検索機能に助けられながら、結局は人力でやっているのが現状だ。Chronicleの記事によれば、今、人間がやっている作業も含めて自動化するのが"3.0"なのだそうだ。これが研究者の活動をどう変えるのか(もしくは変えないのか)興味がわく。Googleの検索で上位にくるためのコンサルティングが生まれたように、自分の論文のprestigeを上げるための講義が大学で開講されそうだ。