外国の昔話が8話収録されている、大判の絵本。


あかずきんちゃん、さんびきのやぎ、おおきなかぶ、さんびきのこぶた、ブレーメンのおんがくたい…など。こうして見ると昔話って「3匹」が多いんですね。絵本は同じシーンが繰り返し出てくることが多いので「サイズを変えて3回繰り返し」だと、ちょうどいいのかもしれません。


誰もが知っている話を、2つの角度から個性的に味付けしてあります。


1つ目はイラスト。ねずみの「メイジーちゃん」で有名なルーシー・カズンズさんによるもの。筆で描いた黒く太い輪郭とざっくり大胆な絵柄が特徴。「さんびきのこぶた」で狼の顔を見開き2ページでアップに描いたシーンは迫力満点。とにかく動物たちが、魅力的に描かれています。


たとえば「めんどりメリー」では、鶏、雄鶏、カモ、ガチョウ、七面鳥と鳥類ばかり数種類の特徴がよく伝わってきて、小さな子でも「これは、がちょうのガッチョマン」と確認できます。そして、後日、動物園や庭園でがちょうを見つけると「ガッチョマン!」と喜んでいて、絵本によって現実世界への感受性も高まることを感じます。


読み始めた当時、3歳になったばかりの息子は「悪役」に興味があり、キツネや狼をじっと見ていました。彼の分析では「わるものは爪が伸びている」。その後、自分の爪を切る時も「爪がのびると、悪者になっちゃうからね」と言いながら、納得していました。


本書の2つ目の特徴は文章です。誰もが知っているお話ですが、口語で、ちょっとふざけた雰囲気を加味した軽い文体になっています。これによって、童謡を歌うような感じで読み聞かせができます。


「もりのなかで、おおかみに あっちゃった」(あかずきんちゃん)


「『こぶた こぶた いれてくれ』『だめだよ〜だ。あっかんべろべろ べえろべろ。ぜったい いれてやるもんか』(さんびきのこぶた)


「むかしむかし ろばが ブレーメンへ いって、おんがくを やろうと きめました(中略) 『どうした、いぬ? かなしそうじゃないか』ろばが ききました。『おれ すてられたんだ』と いぬ。『それじゃ いっしょに ブレーメンへ いって、 おんがくを やろう(後略)』」(ブレーメンのおんがくたい)

センスの良い訳で、声に出して読んでいて、親も楽しい気分になります。