実はいい人だった?サマーズ


ちなみにサンドバーグの指導教官を務めたサマーズは、ハーバード大学の学長を務めたが、女性差別的な発言が問題となって退任したとされる人物であり、米国では一流の社会学者、心理学者がサマーズ発言に関連した研究や書籍を発表している。そうしたものを読んできた身からすると、本書から受けるサマーズ像は性差別主義者とは正反対であり、興味深い。


学部生時代、そのサマーズ自ら指導を買って出たのがサンドバーグだったわけで、このファクトだけを取ってみても、彼女がいかに優秀であったか容易に推測がつくし、サンドバーグが本書を通じて恩師サマーズがおっている天才的な頭脳を持つが性差別主義者というイメージを払拭したいと考えていることも伝わってくる。もちろん、本書にはそんなことは一言も書いていないけれど。


さて、そんな超がつくほど優秀な女性でも、キャリアを開拓するのが容易ではなかったことが、数々のエピソードから明らかになる。例えばシリコンバレーで職探しをしていた際、イーベイのメグ・ホイットマンから「あなたみたいな政府の仕事をしてきた人はハイテク業界では必要ない」と言われたこと。シリコンバレーでの職探しが当初予定の4カ月を大幅に上回り1年かかったことなど、シェリル・サンドバーグでさえ、キャリアは一本道ではなかったのだな、と思うと凡人ビジネスパーソンは安心できる。


だから著者は「キャリアは梯子(ラダー)ではなくジャングルジムである」と言う。必ずしも上るか落ちるかではなく、同じ場所にとどまることもあれば、横に移動することもあるし、少し下がって横に移ることもある、と。このように、現役経営者のキャリアの軌跡として、男女ともに参考になるエピソードがたくさん詰まっている。


さらにつっこんで、本書の魅力を考えてみると、私から見ると3つあるように思えた。