29日に開かれたハイレベル・ラウンドテーブル「困難を抱える女性たち」で司会をつとめ、国内外の有識者の皆さんと、シングルマザーが直面する課題やマタハラ問題を議論しました。
当日の様子は、こちらのウェブサイトにまとまっています。右側の写真は私たちの会議の様子を写したもので、安倍首相にシングルマザーの経済支援や社会文化問題を聞いてもらっている場面です。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_001825.html
外務省の会議というと、どうしても「遠いイメージ」を持たれます。都会のエリート女性が閉ざされた場で自分の利益を追求してるんじゃない、と思われる方も多いでしょう。
プログラム内容を検討するため、初夏から数回、官邸で開かれた会議に参加しました。会議には、ジェンダー専門家の友人、大先輩たちがいて、口々に「自力で輝ける恵まれた立場の女性以外のことも考えてほしい」と意見を述べました。私からは、地方都市でシングルマザー支援に取り組む方の活動を取材した記事や、マタニティハラスメント関連の訴訟を取材した記事を資料として提出しています。
会議のテーマが”WAW! For ALL”であることと、私たちの提案内容が合致したようで、こうした分科会が設けられて嬉しく思いました。
日本は先進国ですから、女性が働き続けるための法制度は、形式的には整っています。産休や育休を保障する制度。税金で運営費用の大半が賄われる認可保育園。そしていざという時のセーフティネットになる生活保護。
一方で、これら制度を実質的に使えなくするような、社会文化規範が存在します。会議参加者の川口加奈さん(ホームレス支援NPO ホームドア)は、困窮した女性に付き添って生活保護申請窓口へ行った時、役所の担当者から「若い女性なんだから、働けるでしょ」と言われたそうです。若い「女性」というところがポイントで、水商売をすることを勧めているわけです。
また、岩手県盛岡市の山屋理恵さん(ひとり親支援を行うNPOインクルいわて)は、DVなどで心身共に傷ついている離婚したシングルマザーに、ハローワークで仕事を見つけるよう促すだけの今の就労支援の仕組みが、事実上、機能していないことを報告しました。ひとり親の自立支援は経済政策ですが、心の課題を無視しては、有効な経済政策をうてない、と言えます。
営業職に就くことで女性の経済的自立を促す太田彩子さん、シングルマザーを管理職候補として企業に紹介している福井真紀子さん、そしてシングルマザーが育児と仕事を両立できる環境を提供することで、良い人材を獲得できていると語る喜久屋の中畠信一社長など、様々な立場でこの問題に取り組む方のお話が聞けました。こうした支援をワンストップで提供できるといいなあ、と励まされる思いがします。
妊娠解雇や降格の問題に取り組む小酒部さやかさん(NPO マタハラNet)からは、シングルマザーとマタハラ問題に共通する、社会文化的な問題を指摘していただきました。自己責任という言葉で被害者を責める風潮は、残念ながら日本には色濃く残っています。
海外からは、シングルマザー差別が一切ない文化について(デンマーク)、SNS等を活用した世論喚起の方法(ラトヴィア)、国内の都市部と地方・教育水準の格差(コートジヴォアール)、DV問題を政治の優先課題にすることの難しさ(マーシャル)に関する問題提起があり、いずれも日本に通じると思いました。
このハイレベル・ラウンドテーブルには、山本かなえ厚生労働副大臣が終日参加しており、マタハラ問題への対応が甘い日本の課題などについて、深くうなずきながら聴いていました。その後、9月4日に厚労省がマタハラ雇用主の名称を公表しています。すでに今春、決定していた方針ではありますが、実際に行政が動いた初の事例。注目される場で問題をアジェンダにのせることの意味を感じました。