プリンストン大学教授・アン・マリー・スローターさんの新刊”Unfinished Business”の書評続きです。日本社会への教訓がたくさん詰まっています。


Unfinished Business: Women Men Work Family

Unfinished Business: Women Men Work Family


前編)で書いたように、2児の母であるスローターさんが、自身の単身赴任をきっかけに両立の難しさに直面し、子どものそばにいたいと考え、一番やりたかった仕事をあきらめたこと、が本書執筆のきっかけです。


ここでスローターさんが目指していたのは、単に子どもを持ちながら仕事を続けることではありません。彼女はそれをとっくに達成しているからです。問題は、能力や配偶者に恵まれた人であっても、仕事も子育ても「自分が望む形で両方手に入れること」が難しい、ということです。


それは「男性だって、難しい」ところに、問題の本質があります。本書では、パタハラ問題も指摘されています(41ページ)。ウォートンやハーバード・ビジネス・スクールといったトップMBAの男性もワーク・ライフ・バランスを心配しているそうです(56ページ)。


根底にあるのは、長く働く人を「頑張っている」と評価する文化であり、残業文化を指摘されるのを嫌がる企業の姿勢である(58ページ)。在宅勤務などワーク・ライフ・バランスの制度があっても、実際には使えないこと(61〜62ページ)という下りは、日本と共通しています。


日本とアメリカで、文化も社会制度もずいぶん違いますが、本書が提起する問題の数々は、日本社会にも当てはまることばかりです。