今日は2つのイベントを見に行った。


それぞれ主催者は違ったが、途上国の貧困層という共通のテーマがあった。ひとつめは貧困層の労働条件、ふたつめは貧困層を顧客として捉えるというもの。


ひとつめのイベントはanti sweatshop(反搾取工場)を訴える学生団体が主催した。ミシガン大学のロゴ入り製品(Tシャツなど)を作る業者に一定のルールを守らせることを、大学に要求していた。10人余が学長室を占拠。建物前にある広場に学生が約20人集まって、応援の意思表示をする。


立てこもっていた学生の1人と知り合いだったので、私も広場まで見に行ってみた。搾取工場反対の趣旨はいいのだけれど、具体的に何を要求しているのか分かりにくかったため、支持者の数はやはり少ない。PRなど工夫の余地は大きいと思うが、いずれにしても若い人が「世の中を変えられる」と思い行動に移せる雰囲気はいいものだ。


夕方にはビジネススクールC・K・プラハラード教授の講演(写真)を聴いた。世界に40億人いる貧困層(ピラミッドの底辺層:Bottom of the Pyramid=BOP)を消費者と捉え、新しい商機をつかむことを提唱している人気教授だ。著書『ネクスト・マーケット』は和訳されている。


従来は経済支援の対象とみなされてきた貧困層を相手にしたビジネスの事例紹介が面白かった。例えば石油会社のBPがインドの貧困家庭向けに作った煮炊き用の設備。これまでは前近代的な方法で火を起こし、料理をしていたため非効率なうえ、家族は煙で健康を害していた。プラハラード教授は現地の潜在顧客が必要とする「エネルギー提供」に関するビジネスをするよう、BPにアドバイス。ちょうどインド進出を考えていた同社がそれを実行に移したという。


貧困層相手のビジネスという意味で、グラミン銀行の設立者ムハマド・ユヌスさんと似たものを感じた。東京でインタビューしたユヌスさんは、貧困層のことを真剣に考えているだけでなく、前向きで実践的な考え方の持ち主だった。プラハラード教授も同様で「私は理想主義者だが、実践的でもある。完全な解決方法を考えて何もしないより、できることをすべきだ。貧困層のために何をすべきかは分かっているが、実際にどうやるか知っている人は少ない」と話していた。