クルマで約1時間のところにある街でインタビューをした。


2人の50代女性が仕事と家庭生活の両立体験を話してくれた。すごく良い天気だったので、うかがったお宅のテラスで軽食をいただきつつ話を聞いた。家のすぐ裏にはトウモロコシ畑が広がっている。


話をしてくれた女性の片方は看護婦、もう片方は小学校教師として約30年間働いてきた。娘と息子が1人ずついて、夫が自動車関連の大企業勤務という共通点がある。中西部の都市近郊に住む典型的な家族だ。年配世代であるためか、彼女たちの夫は家事や育児をあまりやらないらしい。家事分担は「フェアだと思いますか?」と聞いたら、2人とも声を合わせて「No!!」と答えた。


日本の働く女性の現状や産休・育休制度、高齢化や介護保険制度に義務教育や学校給食についてなど、私も聞かれるままにあれこれ話した。ワークライフバランスの難しさについては「同じ悩みを持ってるのねえ」と感心し、人々が政府に期待する度合いは「全然違うわね!」と驚いたりして、気がついたら2時間半も経っていた。これまで図らずも「協力的な夫を持つ妻たち」ばかりに話を聞いてきたが、今回は普通の(さほど協力的でない)夫について聞けたのは、ありがたかった。


特に興味深かったのは教会仲間の集会について。気心の知れた人同士、5〜6夫婦が集まり、週1回、聖書勉強会を開くそうだ。そこで聖書の話だけでなく、家族の問題についても話し合う。例えば、夫がいかに家事をしないか、ある妻が文句を言うと、別の妻も同じ意見を口にする。同じ不満を抱いている人がいると知ると、少し気分が軽くなるという。夫の方も第三者に指摘されると、なるほどと言って家事分担を増やすことがあるそうだ。子供の進学や自分の勤務時間など、ワークライフバランスについて話す機会も多いらしい。


教会と聞くと宗教活動をイメージするが、こんな話題まで扱うとは知らなかった。こうした集まりはカウンセリングやメンタリング機能もそなえているように見える。日本企業における飲み会と同種の効果があるのではと感じた。


そもそ彼女たちを紹介してくれたのは、東京で知り合ったアメリカ人夫妻だった。皆、同じ教会に通っている。初対面の外国人の私に対して驚くほど親切に、そしてオープンに話してくれたのは、教会仲間からの紹介という信用があってこそだろう。アメリカ人とキリスト教の関連について、メディアを通じて聞いてはいたが、当事者に話を聞けたのは本当に貴重だった。