ジェンダーと組織運営について、欧米の研究を見ていて釈然としないことがある。


現状の問題点を「男性性」とレッテル貼りしがちなことだ。チャレンジャー号墜落の経緯を分析した論文はその一例だった。タイトルは"Gender Equity, Organizational Transformation and Challenger"。オランダの学術誌Journal of Business Ethicsに1997年に掲載された。


これによると、技術者たちはシャトル発射延期を主張している。外気温が低すぎると考えたためだ。ところが上司はこの忠告を聞き入れない。技術者たちのアドバイスをあえて逆に解釈して発射を強行した。論文の著者は一連のやり取りを「男性的な組織運営」として批判している。


興味深い分析だと感じる一方、違和感を覚えた。問題の元を"男らしさ"に帰している部分だ。批判の対象は上命下達文化であり「部下の意見を聞かない上司」である。この状況判断の誤りを男性的組織運営のせいと言うのはちょっと行きすぎだ。


私自身は"男らしいマネジメント"にも利点があると思う。以前、ある男性上司に仕事に関する相談をしたら、数日後の会議で懸念が解消されるような指示を出してくれた。私が話したことを他の同僚に知られることなく、スムーズにことが運び非常にありがたかった。あれこれ説明しないやり方は、ステレオタイプな表現をするなら男らしいやり方と言えるだろう。


男性が大半を占めていた日本の企業社会に、ここ数年、女性が増えてきている。変化が起きる時は過去を批判的に見る眼が必要になる。でも、男性的なものが全て悪いわけでもないし、女性的なものが全て良いわけでもない。もちろん逆も然りだ。問題が起きたとき、性別ばかりでなく個人差を見るようにしたいと思う。