この街では"世界の料理アメリカ版"に事欠かない。


日本食も中華料理も現地化されている。美味しいものを食べ慣れた日本人は「何か間違っている」と思うだろう。以前、日本のラーメン屋がある、と聞いて車で行ってみたら、とんでもないインスタントで仰天した。しかも行列が出来ている。こんなの日本だったら半日でつぶれる。独占状態だと供給者がどこまで手抜きをするか示す良い事例になりそうだ。


ピザ屋もたくさんあるが、ほぼ全てアメリカ風。生地が分厚くて歯ごたえがなく、ゴムのようなチーズが大量に乗っている。トッピングはサラミか得体の知れない肉で、野菜はとても新鮮とは言えない。


幸い、車で10分のところにアジア食料品スーパーがあるので、和食は家で食べられる。他は諦めかけていたところ、本物のピザを発見した。しかも毎日通っている道沿いにあったのだ。


今日はブック・フェアのため、大通りには人出が多かった。イベントの一環で、日本語で名前を書くボランティアを連れ合いと一緒にやり、帰宅しようとした時、ピザのお皿を持った若者がやってきた。値段を聞くと「タダだ」という。宣伝のために店で作ったピザとチラシを配っていたのだ。


それが"本物のピザ"だったので驚いて「どこにあるの? 新しい店?」と尋ねると、徒歩1分もかからないところにあった(写真)。いつも通っている道だが、建物の奥まったところにあるので見過ごしていた。オーガニックのピザを作っているという。薄い生地、本物のトマト、少量のチーズ(しかもゴムチーズじゃない!)・・・内装は古いが、子供が書いたピザの絵が壁一面に貼ってあって手作り感がある。一切れ2ドルというのも良心的だ。ちなみに近所のアメリカ風ピザ屋は一切れ約3ドル。


もらったチラシをあらためて読んでみると、アメリカ風ピザが「本物とは似ても似つかない」こと、オーナーのSilvio(シルビオ)さんは「父親のパン屋で25年修行して、美味しい生地の作り方を学んだ」ことが書いてある。キッチンでピザを焼いていたシルビオさんに「おいしい!!」と言うとカウンターから出てきて「今、マルゲリータが焼けるから」と笑顔で言う。食べている途中でチラシの若者が帰ってきたので「美味しかったのですぐ、店に来た」と言うと喜んでいた。


営業時間は年中無休で開店は毎日朝10時。月曜から木曜は夜中まで、金曜土曜は午前3時まで、日曜は夜10時までやっている。朝から晩まで真面目にピザを作り続けている様子が目に浮かぶ。巨大チェーン店の多いアメリカで、個人で頑張っていいものを作る人を見るのは嬉しい。


近所に住んでいて、アメリカ風ピザの不味さに辟易している方はぜひお試しください。住所は 715 North University, Ann Arbor, Michigan 。"Sushi.com"というお寿司屋さんが入っているビルの奥にあります。宅配もやっているそうで、電話は734-214-6666