1月3日付のEconomist誌より。

記事原文はこちらへ。大ざっぱな内容はこんな感じだ。


ノルウェーは2003年に制定した法で、上場企業の役員に占める女性比率を4割以上にすることを定めた。法律は今月から施行される。法案通過時点では7%だった役員に占める女性比率が今では36%にまで上がったが、対象となる480社中、75社はまだ基準を満たしていない。法律の適用を避けるため、非上場化した企業もある。


経済界はこの法律に大反対で、性別でなく成果と能力で判断すべきと主張している。この4年間でノルウェー企業は役員に迎えるため1000人の女性を採用したが、適任者はまだ足りない。そのため役員適格者の女性の中には25〜35もの職を掛け持ちしている人もいる。特に、石油、金融、IT業界では経験のある女性を見つけるのが難しい。


たとえ役員になっても、経験不足の女性では遠慮してしまい役員会で積極的に発言できないのでは、と心配する向きもある。女性役員増に肯定的な人は、最近起きた企業不祥事の例を挙げる。ノルウェー最大の企業で違法取引が発覚した際、緊急役員会を召集しCEO解任をもたらしたのは女性であった。

私はこの件で2004年にノルウェー男女共同参画保育局長にインタビューをしており、その後どうなったのか気になっていた。経済界の大反対に遭いながら担当大臣の強力なリーダーシップでこの法律が通ったそうだ。ノルウェーでは皇太子夫妻も男女平等推進に積極的で、外遊や演説の際はこうしたテーマで話すことも多いという。男女平等を国のソフトパワーと捉えているのだ。日本との差に呆気に取られた。


ビジネス誌の記者をしている立場からすれば、ノルウェー経済界の男性達の反対はよく理解できる。日本でも女性活用の流れに乗り、大して能力のない女性や人望のない女性まで昇進しているという話を聞くことがある。有能な男より無能な女を優遇してしまっては、競争力が低下するかもしれない。


ノルウェーでこういう法律が通ってしまい、何だかんだ言いつつもわずか4年で役員に占める女性比率が29ポイントも上がるのは、その人口が少ないためではないかと思う。ノルウェーの人口は473万人。東京23区の人口の約半分だ。このくらいの規模なら社会実験として「女、4割!」というのもありかもしれない。


北欧で大きな政府が可能なのは、人口が少なく国のあり方について合意形成しやすいからではないかと前々から思っていたが、日本では残念ながらこういうのは無理である。私は政治的にはリベラルだが経済的にはリバタリアンだと最近気づいた。1億何千万人もいたら自分と価値観が違う人が多い。違うだけならお互いの考えを尊重して生きていけばいいが、世の中には自分の考えを押しつけてくる人も少なくない。そういう人の意見をネット上で読むと本当に暗い気分になる。私が一生懸命働いて払った税金の一部が、こんな人たちと家族のために使われていると思うと腹立たしい。公的サービスにお金を払うのはいいが、政府に使い道を一任したくないので、小さな政府嗜好になってきている。