育児でいったん仕事を辞めてしまうと、再就職はとても難しい。


 海外でも事情は同じだが、アメリカではもう少しましなようで、だから、再就職「した後」の注意が話題になる。WSJの記事では、そういう母親たちの実情が描かれている。

 
 仕事を見つけるのが難しいこのご時世に、何とか再就職した母親たち。一番困るのはやはり、ITを使いこなすこと。「エクセルでやっといて」と上司に言われて、意味が分からず、大学に駆け込んでアドバイスを仰ぐ人。24時間、メールが飛び交うことに戸惑う人。顔を合わせて話すのでなく、メールでコミュニケーションが進むのでやりにくいなと感じる人。


 これらは、日本の中高年サラリーマンと似たような悩みだ。「マウスでクリックが分からないおじさん」は、日本でも若いビジネスマン向けの雑誌で笑い話にされていた。


 アメリカの母親たちには、もうひとつ困ることがある。それは同僚との世代間格差。自分の子どもと同じくらいの年の人たちと一緒に働くことがあるからだ。記事は「『子どもが大学生』なんて言うと『ものすごい年寄り』と思われてしまう」と警告する。


 確かに、26〜32歳くらいで産んだ子どもが大学生になると、母親は44〜50歳。大学を出たての同僚にとっては、お母さんと同じくらいになる。


 日本企業の場合は年功(というより年齢)序列がまだ色濃く残っているから、24歳と44歳が“同僚”として働くことは少ない。年が離れていれば上司と部下、または先輩と後輩という序列がある。だから、中途採用はやりにくいし、高齢者の再就職も、年の割に経験が浅い元主婦も採用しにくい。年齢に応じて処遇すると、高い賃金を払わなくてはならないからだ。


 ならば、年齢による序列を撤廃し、実力に応じて仕事が与えられれば、いったん労働市場を離れても、復帰しやすいのでは、と思う。確かにその通りで、だからこそ、日本の高学歴主婦が再就職で良い仕事にありつくのは絶望的だが、アメリカの方がまだ希望はある。WSJの記事でコメントしている再就職コンサルタントのキャロルさんに、2年前、私も東京でインタビューした。「アメリカでは女性MBAホルダーの再就職ブーム」と聞いて、面白い動きだと思った。


 アメリカの労働市場で起きたことは、日本でも少し遅れて起きることが多い。例えば中間層の没落。それに伴い男性片働き家庭が成り立たなくなる現象。必要に迫られての妻の就業継続と共働きの増加。


 日本でも起きているこれらの流れに続き、今後は主婦の再就職が広がっていくと思う。働きたいと思う主婦の方々は、チャンスに備えて、パソコンの使い方を夫や子どもから習い、さらに自分の子どもくらいの年齢の人と自然にコミュニケーションするスキルを身につけると強いと思う。