世の中、少しずつ進歩しているから、最近はあからさまな差別やハラスメントをする人は減った。


 職場の壁にヌード写真を貼る人も、「女性は結婚して家庭に入るべき」としらふで口にする人もいない。少なくとも、一定以上のリテラシーの人が集まるまともな職場には。


 それでも「差別」と呼ぶほどではないけれど「何か感じ悪い」ことを言う人はまだまだたくさんいる。ネタは女性差別に限らず、家族形態や容姿や学歴や出身校などいろいろだ。ハラスメント窓口や人事に相談するほどではなく、でも「私が女じゃなかったら」「僕が○○出身じゃなかったら」こういう嫌な思いはしないんだけど・・・と思う。


 ダイバーシティ先進国のアメリカでも事情は同じらしく「Working Mother」2・3月号にこんな記事が載っていた(写真)。micro-inequities。小さな不平等。ちょっとした差別。


 記事によると、あるハーバーMBAの女性は女性上司にこう言われた。


1)本人は採用された時、妊娠していた
ちょっとでも「疲れた」と言うと、「子どもを作るのを遅らせればよかった、とは思わない?」と女性上司。上司本人は仕事のために子作りを遅らせたそうだ


2)1年後、本人は再び妊娠した
上司いわく「私は戦力が欲しいのであって、マミー・トラックの人はいらない」。そして「そんなに若くして子どもを持つのは、文化的な背景か?」とたずねた。このハーバーMBA女性はナイジェリア出身で当時31歳だったのだ。


 いや、驚いた。これは“小さな差別”なんかじゃなく、立派なハラスメントだと思うけれど。日本のまともな管理職は、男女を問わずこんなこと言わない。仮に思っても、口に出したらどんな反撃にあうか分からない。


 さらに驚いたのは、人事の対応だ。


3)本人が文句を言ったら
「大ごとにするな」と言われた。


 ・・・。アメリカにも“遅れた会社”があるんですね。性別に加えて人種が絡んでいるから二重にダメだと思う。


 記事には良い例も載っている。会計事務所のデロイトとプライス・ウォーターハウス。eラーニングや対面の研修を活用して、従業員が「内なる差別心」に気づく教育を行う。


 進んでいると思っていたアメリカの意外に遅れた例を見て驚いた。「これなら、うちの方がましでは」と多くの日本人が思のではないか。