有名なおさるのジョージの物語。


何冊かある中で息子(3歳)が特に気に入っているのが、このチョコレート工場の話。製造ラインに入りこんでしまったジョージが、チョコレート作りを手伝うシーンが好きで"Bring more boxes!"というセリフを真似て喜んでいます。


他にも、ジョージが博物館に入りこんだり、牧場でちょっとしたトラブルを起こすお話を描いた本もあります。英語(読み聞かせは夫)をどこまで理解しているか分かりませんが、ジョージの行動には共感している様子。


一緒になって読んでいると、ジョージと飼い主の「黄色い帽子の男性」との関係がちょっと変わっていることに気づきました。飼い主がジョージを「ペット扱い」しないのです。この男性、ジョージのいたずらに驚くことはあっても、叱るとか罰するといった反応をしない。対等なパートナーとして、あたかも親戚の男の子みたいにジョージと接しています。


なぜこういう発想になるのか、気になって調べてみると、作者のレイ夫妻がたいへんな動物好きであることが分かりました。また、ユダヤ人だった夫妻がナチス・ドイツの侵攻を逃れてヨーロッパからアメリカに渡ったことも。さらに詳しく知りたくなって読んだのが、こちら。


戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅 (大型絵本)

戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅 (大型絵本)


ドイツ生まれのユダヤ人であるレイ夫妻が、ナチスの進軍を知って旅立つまでを描いています。たまたま、ブラジルの市民権を持っていたことが、2人の命を救いました。自転車でパリを出て、フランスからスペイン、ポルトガルを経てブラジルに渡り、最後にはアメリカ・ニューヨークに着くまでの旅を、子どもでも分かる平易な文章で綴っています。


当時の写真やレイ夫妻が書いた手紙やイラストを散りばめたカラフルな「絵本」ですが、内容はまさに息詰まる展開です。逃避行の途中で経由する街々を出るのが、あと一歩遅ければ子ども達が「おさるのジョージ」を読むこともなかったからです。


レイ夫妻がアメリカ合衆国にわたったのは1940年10月。翌月に4冊の絵本の出版契約を結びました。そして翌'41年秋に出版された「ひとまねこざるときいろいぼうし」は2700万部を超す売れ行きとなり、14カ国以上で翻訳されているそうです。動物への優しい目線にあふれた、ユーモアのある絵本が生まれる背景に何があったのか。子どもの本を通して歴史を振り返る機会となりました。