5年経っても有効な指摘と提案


本書刊行から5年弱が経った今、日本の内向き志向を批判する言説は、メディアでも広く提供されている。経営者などリーダーからは、特に若者の内向き志向を嘆く声がよく聞こえてくる。生まれた時から先進国。インターネットも携帯電話もある。満足しすぎて頑張らなくなった若者はこのままでは新興国に負ける云々…と。


つい先日、インターネットで公開された「弁当男子、イクメンは出世できない」という経営者のインタビュー記事も、そうしたハングリーでない若者批判の文脈に位置付けられる。


こうした言説に違和感を覚えている人にはぜひ、本書の第4章を読んでもらいたい。


ハングリーな時代のネガティブなインセンティブが通用しない、いまの時代、ポジティブなインセンティブ設計以外の選択肢は考えにくい。設計自体を批判するよりも、副作用をなるべく抑えるように仕組みを改善し、日本的な規律教育との新しいバランス点を探していく方が現実的だ。(p157)

そして言うまでもないが、新しい変化を起こすのは必ずしも主流派の人ではない。シリコンバレーの状況を踏まえて、著者はこう記す。


ベンチャーを興すのは大変人やプチ変人であることが多いが、そこで働くのは普通の人である。普通の人に、ある程度の雇用流動性がないと、新しい企業や産業ができても、なかなか大きく育たない。(p162)