シリコンバレー在住のコンサルタントが記した日本論というと「英語喋れない自分には関係ない」と思う人も多いかもしれない。


これは、そういう“普通の日本人”こそ読んでほしい本です。特に普通の働くお父さんお母さん達に。


題名の「パラダイス鎖国」に本書の趣旨は凝縮されている。豊かな先進国として美食と綺麗な街と安全と安定を享受している“パラダイスな日本”。一方で各種指標から国際的な競争力は小国や新興国より低いとされ、存在感も低下している。日本人自身が「それでいいや」と開き直り、内に閉じこもり“まるで鎖国みたい”になっている。そういう問題を、様々なデータを紹介しながらきわめて分かりやすく、感覚的に納得できる形で記してある。特に「そうそう!」と思ったのは、例えばこんな指摘だ。


国民全体が享受できる基本的なもの以外は、整備や変化がすすまない
高等教育整備、各種権利保護、個別の産業に対する対策など、議論の分かれやすい点、時代の変化によりやり方を変えていく必要のある点については、なかなか進まない(p76-77)

その通りだと思う。このブログで主に扱っている、共働き子育てやワーク・ライフ・バランスに関する議論でよく問題になることが、この一文で表現されていると思いました。


こうした日本の抱える問題点について、著者は、自分が経験した自動車業界と電機業界の例を出しながら分かりやすく紐解いていく。自動車も電機も日本が誇る2大産業だったから、そのうちの片方である電機業界の失敗は痛かった。その理由が何なのか。若いビジネスパーソンや学生さんにもぜひ読んでほしいです。