千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館。「1968年」をテーマにした特別展示を見てきました。



特に印象的だったのは、当時起きた様々な市民運動で使われたビラや冊子、手紙、旗などの現物。たとえば、べ平連に関する展示では、小田実鶴見俊輔の発言紹介はもちろん、戦争をやめてほしい、という中学生の詩を印刷した小さな色画用紙(6色ある)のビラがある。脱走した米兵が海外から日本の支援者に送ったハガキもあれば、サルトルがべ平連参加者に送った電報も。すべて現物というのがすごい。


神戸で起きた反戦運動に焦点を当てたスペースでは、参加した女性たちの声を紹介する一角があり、ちゃんとジェンダー視点が入っている。学生運動の資料展示には映画『何を怖れる』で描かれた、ウーマン・リブのキーパソンによる異議申し立ての発言を紹介。


私が最も心を打たれたのは、胎児性水俣病の子どもを持つ母親の写真や発言でした。「あなたの子どもだったら、どうですか」という問いはシンプルでありながら重い。人権を無視し、目先の経済発展に優先させた人たちを告発する。元チッソ社員(地元では超エリート)の男性が、あることをきっかけに水俣病患者を無視してきた自らを反省し、患者の記録映画を作った、というエピソードの紹介も良かったです。


企画趣旨にある通り「個人」に焦点を当て、知識人だけでなく、普通の人びと(母親、学生、子ども等)の声をたくさん紹介してあったのが良かったです。時代が変わる時というのは、多くの人が考えて行動する、ということが伝わってきました。成田の三里塚闘争に関する展示では、苦労して耕した土地を事前相談なく取り上げられることに対する農民の怒りがよく伝わってきました。子どもまで参加した抗議行動を、当時「週刊少年ジャンプ」が取材しカラー写真入りで紹介しており、社会現象であったことが分かります。


常設展示は、中世農民の自立した暮らし、当時の女性の仕事、ふつうの人々の生活にスポットを当てたもの、戦争と平和を切り口にした現代に関する展示などよかったです。


こちらは常設展示の婦人参政権開始時に文科省が作ったポスター。女性に投票することを、くだけた文体で強く勧めている。デザインも前衛的です。