この2年間、仕事を半分くらいにして、大学院に通っていました。



人生100年時代」と言われる少し前から「70歳まで働くだろうな」と思っていました。身近な人を見ていても、年齢より個人差が大きく、50代でも頭が固い人もいれば、80代近くても「ぜひ一緒に働きたい」と思う人もいます。自分が75歳の時、40歳の人から「一緒に仕事したい」と思ってもらえるようになるには、どうしたらいいか。


はっきりした答えは分かりませんが「10年ごとに自己投資に時間を割く」というのが、私には合っていることもあり、41歳の時に大学院修士課程に入学しました。


ちょうど、10年前、32歳の時、フルブライトのジャーナリストプログラムでアメリカに1年留学しており、そこでの体験は、その後10年間の仕事に影響を与えたと思っています。何をテーマに選ぶか、そしてどんな風に働くか。たぶん、会社勤めを続けていたら、今のような働き方はしていなかったでしょうし、扱うテーマも違っていたでしょう。


最近数年、主にジェンダーや子ども関連の記事を書いたり、講演をしたり、企業向けに助言のお仕事をしたり、政府機関や非営利団体の審議会委員をしています。ここにマネジメントに関する体系だった知見を加えると、自分の仕事の付加価値が増すはずと考えて経営学修士課程を選びました。


ゼミではジェンダー規範の変容とコンテンツ」をテーマに修士論文のようなもの(私の通ったコースでは、ワークショップレポートと呼ばれていました)を書きました。指導教官はエンジニア出身で技術戦略が専門の教授。意外なことにジェンダーの話をとても面白がって下さり、2週間に1度の進捗報告のたびに有益なアドバイスをいただきました。


他分野の専門家と話すと視野が開けることがあります。ゼミのクラスメートは、建築事務所の経営、企業理念とパフォーマンス、高収益BtoB企業、不祥事の研究、企業ミュージアム、サッカーのファンコミュニティ、「ことば」について、茶の湯江戸切子など、多様なテーマで発表をしていて、毎回楽しかったです。自分が知らないテーマについて聞くことで、自分がよく知っているテーマについて、広く理解してもらうためのプレゼンテーションのやり方を学ぶこともできました。


講義は毎回、けっこうな量を読んだり書いたり、予習が必要です。きちんと準備して受講すると、得るものも大きいですし、先生たちがレポートの添削や質問への回答を真摯にして下さるのもありがたく思いました。(年を取ると、自分の仕事を直していただく機会が少なくなります)


クラスメートは、私よりおよそ10歳若い社会人と、20歳若い新卒学生の方々。そして留学生でした。大きな組織から派遣された社会人の方とは、今の日本企業の実状や、成績の良い人たちの行動特性を教えていただきました。グループで調査してプレゼンする機会も多く、優秀な人は年齢を問わず優秀だということを目の当たりにしました。年齢差より、個人の能力差の方が重要だと思います。


留学生の方は、私と同じように子育てしながら大学院に通っている方、日本企業で勤務経験のある方、新卒に近い方と色々でした。祖国やご両親のお話、今後どんなキャリア展望を描いているか、主にアジアから来ている彼・彼女たちの話を直に聞くことができて、すごく楽しかったです。


私の周囲には、最近、10年、20年働いた後、大学院へ通い始める人がいます。長年、仕事でアウトプットを続けてくると、インプットへの強烈な欲求がわいてくるのかもしれません。現場や実践だけでは足りないと思った大人が欲しいものを、私は確かに受け取りました。