今日、人事部門で研修担当のシニア・ディレクターを務めるエリザベス・クラークさんに話を聞いたら、日本企業にも通じる話が多くて面白かった。
例えば業績の評価。
ミシガンの職員はフレックス制度を活用する人が多く、育児中の人(男女問わず)が短時間勤務をしたり、仕事を一部持ち帰って自宅でインターネットを使って片付けることもあるという。フレックスといっても決まった形があるわけでなく、個別に上司と交渉する。「この人は優秀だから辞めてほしくない」と上司が判断したら、大学が提供している制度を上手く組み合わせて本人のニーズに合った勤務形態にする。
同じような働き方を日本企業で導入しようとした場合「部下がオフィスにいない間の仕事ぶりをどうやって評価するか」ということが問題になりそうだ。多くのホワイトカラーは成果を数字で計れるような仕事をしていない。上司はどうしたらいいのか。
「評価でなくコミュニケーションを重視する」というのがクラークさんの答えだった。最近、米国の組織では「評価する」という考え方は嫌われているそうだ。「後から『あれは良かった』とか『悪かった』と言っても取り返しがつかない。それより、事前の目標設定とプロセスのチェックをしっかりする方が好まれる」。要するに個人面談だ。
年に数回から多い人では週に1回、上司と話して目標設定する。短時間勤務の人なら時間数に応じた目標をお互い納得するまで話し合うのだという。メンターリングやコーチングが人気だと聞いて「日本でも今、コーチングはすごく人気がある」と伝えた。
クラークさんのオフィスの本棚には「人事『評価』はもう古い」といった内容の本や、コーチングに関する本が並んでいて、日本のビジネスパーソンと関心事が似ていることがうかがわれた。彼女も講師を務める大学職員の管理職向け研修もバラエティに富んでいる(写真)。
ところで、クラークさんはミシガン大学でもう30年以上勤務している。「この間で一番の変化は何ですか」と聞いてみたところ「TQMだ。トヨタがやっていた手法でしょう?」との答えが返ってきた。彼女が最初にここで仕事を始めた時は上命下達型のピラミッド組織だったという。
TQMについてはこちらのサイトをご覧いただくとして、最近ではテーマごとにチームを作って月1回、改善点を話し合い、年に1回は皆で集まって最終的には学長に提案するような取り組みもされているらしい。様々なレベルの職員が参加意識を持つようになり、従業員満足度も上がったという。大学というと浮世離れしたイメージがあるが、企業組織に有効なマネジメント手法は非営利組織にも適用できるようだ。