大学が学生に提供するのは講義と単位だけではない。


文化やスポーツなど学業とは直接関係がない活動への支援も充実している。先週金曜の夜はキャンパスに隣接した美術館で写真展が無料公開された(写真)。フォードの工場をモノクロで撮影した写真を見ながら、お寿司やフルーツなどを食べつつ学生同士でお喋り。


同種のイベントとしては、"Eats & Arts" というものがあり、通常40ドルほどするコンサートチケットを夕食(ピザとコーラの類)・演奏曲目に関する講演込みで10ドル程度で提供する。先日はこのプログラムを通じて買ったチケットで、ピアノとメサイアヘンデル)を聴いた。


こうしたプログラムを主催するのは大学院の各学部を統括する部門や同窓会組織。美術館内のしゃれた雰囲気や食事まで出す気前のよさは、東京で開かれる企業主催のメディア向けパーティーとよく似ていた。入り口で「名刺をください」と言われないところだけが違う。


民間企業で働いてきた私から見ると「大学が何でここまでできるの? 誰がお金を出してるの?」と不思議に感じる。企業主催のパーティーは宣伝目的であり広報予算が使われていることがすぐに分かるが、大学主催のイベントがなぜこんなにリッチなのか。キャンパス内で毎日いくつも開かれている公開のレクチャーには、必ずコーヒーとお菓子が出るし、お昼時はサンドイッチなど食事が用意されている。私の大学時代を振り返ってみると、日本の国立大学の資金のなさが気の毒になるほどだ。


すぐに思いつくのは寄付と学費である。ミシガン大学は州立のわりに学費が高い。2006年の入学者は州内出身者でも年間9723ドル(約112万円)、州外出身者は2万9131ドル(約338万円)も払う(The Chronicle of Higher Education, Nov 3, 2006)。トップの報酬も高い。ミシガン大学メアリー・スー・コールマン学長の報酬は福利厚生費込みで総額74万2148ドル(約8600万円)。これは州立大学で4番目に高い。ちなみに州立大学学長で報酬トップはデラウェア大学のデビッド・D・ロゼール学長の97万9571ドル(約1億1400万円)。(The Chronicle of Higher Education, Nov 24, 2006)。ほとんどの日本企業の社長はこれより年収が低い。


アメリカの大学は学費だけでなく教育・研究や施設の質も高い。集金力と資金分配力はまるでひとつの政府のようだ。プライベートマネーをがんがん吸い上げて自立的な組織を作り、トップが強いリーダーシップを発揮する--。こういう部分には良くも悪くもアメリカらしさを感じる。