米国には色々な大学ランキングがある。


中でもいちばん有名なのはU.S.Newsが行っているものだ。5月25日付の"The Chronicle of Higher Education"は、このランキングを巡る議論を特集している(写真)。


ハーバードやプリンストン、MIT、スタンフォードといったトップ校は今さら気にする必要はない。すでに揺るぎないブランドを築いている上、莫大な基本財産もある。ランキングに左右されるのは50位以下の大学だ。順位のいかんによって、入学出願者数も左右されるから、当然対策が採られる。


Chronicleはいくつかの大学の"U.S. News対策"を紹介していた。この大学は現在81位。1991年にはランク外(150位以下)だったという。2012年までに、トップ50位に入るため、これまでに2億ドルも投じてきたそうだ。


他にもU.S. Newsのランキングを上げるために懸命な大学は少なくない。一クラスの学生数を減らしたり、学生あたりの教職員数を増やしたり、SATのスコアが高い学生を入学させるため奨学金を設けたり。これらは皆、ランキングの評価基準に沿った戦略だ。


批判もある。いくつかの大学は、Peer Evaluation(大学同士の評価)への回答を拒否して、ランキングをボイコットしている。大学は大衆紙の商業主義に屈するべきでないというのが主な理由だ。


評価手法への批判は、"input"のみを測っているというもの。入学時における学生の能力を見る一方、大学がどの程度の付加価値をつけて彼らを送り出しているか、つまり"output"を評価していないという。クラスの大きさだけでなく、終身在職権(テニュア)を持つ教授に接する時間も評価すべき・・・といった具合だ。


どれももっともな言い分である。


ただ、私が一番驚いたのは、無名大学ですら2億ドル(約240億円)もの資金を持っているという事実である。このカネはどこから来たのか。米国では、大学産業に回ってくるお金が桁外れに大きい。学費が高いのはもちろん、州立なら州政府の予算が使われるし、研究資金の財源には巨額の連邦予算が割り当てられる。寄付だってウソみたいな単位だ。


米国では公的育児支援は最低限だ。産休も育休も無給だし、保育園はほとんど私立。健康保険ですら全国民をカバーしていない自助努力の国なのに、高等教育には人もお金も豊富についている。結構なことだが、ちょっとアンバランスすぎるように思える。