一昨日のニューヨーク・タイムズ紙が報じていた。


ローレンス・サマーズ前学長は「女性が科学の分野で優秀な成績を上げられないのは男女に生まれつきの素質の差があるからだ」--という発言で批判を浴び、昨年2月に辞任している。差別発言で悪化したイメージを回復するため後任に女性をと考えるのは自然だ。候補者として名前が挙がっているのは、ブラウン大学のルース・シモンズ学長、ペンシルバニア大学のエイミー・ガットマン学長など。


ところでこうした有名大学学長の報酬はどのくらいなのか。The Chronicle of HIgher Education(November 24, 2006) に掲載されていた学長の報酬特集で調べてみた。数字はいずれも2004年から2005年にかけての福利厚生費用を含んだ年俸の総額である。


サマーズ氏(ハーバード大)$595,871(約7150万円)、シモンズ氏(ブラウン大)$684,709(約8216万円)、ガットマン氏(ペンシルバニア大)$767,030(約9215万円)。日本の会社員の感覚からいえば高額だが、ここはアメリカ。大学の知名度の高さを考えると意外に少ない。私立大学で最多報酬の学長は、ウィルミントン・カレッジのオードリー・ドベルスタイン氏の、$2,746,241(約3億2954万円)。


トップが高い報酬を得ていれば、リーダーシップを発揮できる。数年間勤める間に普通の人の生涯賃金分は稼げるから、在職中に思い切った改革に取り組める。例え失敗してクビになっても、生活の心配をしなくていい。


一方、不当に高い報酬を得ているように見えることもある。ミシガン州にあるヒルズデールという街では、財政難から退職した消防士の補充すらできずにいた。この街にある大学では、学長が年俸約3000万円ももらっている。学生のほぼ全てが地域住民で占められるタイプのコミュニティ・カレッジで、卒業生の年収が1000万円に届くことはまずありえない。こういうタイプの大学で学長が3000万円ももらうのは明らかに行き過ぎだし、そんなお金があるなら消防士を雇うべきだと思う。


一般人とはかけ離れた好待遇で有能なトップを連れてきて、世界に通じる組織を作るという発想はいかにもアメリカ的だ。けれど世界で勝負しなくていい分野でもトップがもらいすぎているのを見ると、こういうのは諸刃の剣だと感じる。