アメリカの大学には女性の学長が少なくない。


私のいるミシガン大学も学長は女性だし、ハーバードも最近、女性学長を採用した。アイビーリーグのひとつ、ブラウン大学も女性学長を擁している。


"The Chronicle of Higher Education"6月15日号は、数ある女性学長の1人、シャーリー・アン・ジャクソン氏の紹介記事(写真)を載せていた。この人もまた、非常にエネルギッシュである。


彼女が学長として採用されたのは、東海岸にあるRensselaer Polytechnic Instituteという理系の大学。かつては実社会で活躍する卒業生も多かったが、最近はカリキュラムや施設の老朽化から、時代に取り残された感があったそうだ。再び全米規模で名の通った大学にするため、大学がジャクソン氏をヘッドハントした。


ジャクソン学長は、工学中心だったカリキュラムをITとバイオ中心に転換しつつある。1999年の就任以来、8年間で講師や研究者180人を新規採用、そのうち80は新設ポストだそうだ。「IT分野のスター研究者を外部から連れてくる」、「基本財産を倍増する」など重点目標を掲げている。


急激な改革には学内から反発もある。昨年4月には教授陣により不信任決議も出された。結果は149対155の僅差で否決。


日本でも最近、女性が様々な組織の要職に就くようになった。どうしたらリーダーシップを発揮し、改革を成功させられるか考える際ジャクソン学長の経歴は興味深い。


ジャクソン学長の場合、真っ先に目につくのは学歴である。彼女はMITで最初にPhDを取得した黒人女性なのだ。しかも分野は理論物理学。頭脳明晰さにおいて、文句をつけられる人はほとんどいない。次は職歴だ。1995年にはクリントン大統領から原子力規制委員に任命され、現在もIBMフェデックスなどいくつもの企業で役員を務めている。


女性のリーダーシップを語る際、日本では「女性らしいコミュニケーション力」というソフト面が強調されることが多い。でも、実際は抵抗勢力を黙らせて余りある経歴が必要不可欠だ。ワーキングマザー誌の編集長は著書で「出世したい女性は営業をやれ」と書いていた。これもまた、説得力のある業績を作れという意味合いであった。