親しい友人の1人に中国人女性がいる。


共通の知人のホームパーティによばれたり、ちょっとした雑用を一緒にやったりして仲良くなった。彼女が近々、クルマを買うと言うので車種を尋ねたら「ホンダ」と即答。中国人の留学生仲間からは「日本車なんて買っちゃだめじゃん。ボイコットしなきゃ」と冗談交じりに言われたそうだ。彼女は意に介さず「性能も値段も日本車がいいからね」とあっけらかんとしている。


そもそも彼女は日本製品好きだ。会えば日本のテレビドラマの話になり、先日は開口一番「木村拓哉が出てるドラマを見た」。私はもうすぐ帰るから、東京に来る機会があったら連絡してねと言うと"原宿"に行ってみたいという。妹みたいな感じになつかれているのが、嬉しい半面、不思議だったので、思い切って色々聞いてみた。


すると「政治は嫌い。政府で働いて偉くなるのは、ずるい人だけ。人が苦しんでいても平気で見て見ぬふりができないと出世できない」とはっきり言う。知り合いに政府関係者がいるそうだ。学生時代、共産党幹部の子弟がずるをするのを見て、嫌気がさした・・・という話もしてくれた。中国では反日教育も受けたが「今、思うと教科書は一面的だった」と言う。渡米後に台湾や香港の学者が書いた本を読み、視点が全く違うことに気づいたそうだ。


家族や友達のつながりは大事にするが、政府は全く信用しない---まだまだ若いのに、きっぱりと意見を言うので驚いた。


政治より友達とソフトパワーの方が強いのだ。もちろん、彼女の意見が中国の若者を代表しているわけではないが、こちらで知り合った中国人女性たちは総じていい人で、仕事や子供や伝統行事やらについて楽しく話した。


政治ニュースが伝える日中関係は、見ていて暗くなるものばかりだ。懸案事項が山積みで、触れてはいけない話題やら世論操作やら、政治家の愚かな発言がある。こういうものをいくら見たところで、中国に対するイメージは良くならない。


アメリカに住んだことの収穫は、政治ニュースが伝えない個人レベルの交流ができたことだ。こと海外事情について、メディアがいかに一面的な情報しか伝えていないかが、よく分かった。