江沢民の出身校として知られる上海交通大学のキャンパス内ホテルに滞在、第3回経済科学学会(Economic Science Accosiation:ESA・写真)のアジア太平洋地区会議をのぞいている。


ESAは実験経済を中心にした学会である。連れ合いの発表に付き添いつつ観光を・・・と思っていたが、観光より参加者・主催者と雑談する方がずっと面白い。"アカデミアと政府"を切り口に中国の現状が見えるからだ。中国の一流大学は明確な戦略を持ち、成果主義が徹底している。


開会の挨拶をした経済学部長によれば、中国政府は実験経済学に多大な関心を払っている。政策に応用するためだ。急激な経済発展がもたらす諸問題を解決するには純粋理論より人間の行動を実際に観察して得られるデータの方が有効・・・との考えが背景にある。この会議は政府資金で運営されているそうだ。ざっと見たところ参加者は約90人、大半はアジア人男性で約20人が女性、約20人が白人だった。


すでに3年前、上海交通大学は実験経済学専門の研究所を作っている。研究所は実験経済学でノーベル経済学賞を受賞したバーノン・スミス教授の名を冠している。同教授は立ち上げの資金集めを支援し、今日の会議開会時にはビデオで祝辞を述べていた。会議のチェアを勤めたヤン・チェン教授はもともと中国出身。現在はミシガン大学で終身在職権を持ち二児の母でもある。ここまで成功した女性を日本で見つけるのはほとんど不可能だ。


上海交通大学はチェン教授にポストとオフィスを提供、彼女の計らいでカリフォルニア工科大学の研究者らをキーノートスピーカーとして招いた。スピーカーの1人は22歳でシカゴ大学の博士号を取得した、とんでもない経歴。現在は新分野のニューロエコノミクスを研究している。


同じキャンパス内にMBAもある。昼食で同じテーブルに座った教授によると、政府からの予算は「パブリケーション(英語の査読付学術論文)の数に応じて増える」という。成果主義はここに極まれり。MBAには製造業の管理職育成を目的にしたコースがあり、アルコア、デル、コーニング、ハネウェル、ノヴァルティスといった欧米企業がスポンサーに名を連ねる。カリキュラムはMITのそれに倣ったもので、教授の報酬は日本円換算してもちょっと驚くような額。ちなみにここでは教授や学生だけでなく職員も流暢な英語を話す。


数え上げればきりがない、これらファクトから中国の成長源の一端を見た気がする。適材適所・即断即決とは、こういうことかを思い知らされた。