今日はカリフォルニア大学バークレー校社会学部Michael Hout教授のレクチャーを聞いた。


内容は昨年出版した著作"Century of Difference"について。国勢調査のデータをもとに、1900年から現在までアメリカ人の属性を色々な角度から分析したものだ。Hout教授によると、この100年間で一番変わったのは教育だという。


まず、教育を受ける年数が伸びた。現在の下位20%は1900年代はじめの上位20%と教育年数が同じだ。学歴別に年収を比べると、当然のことながら高学歴ほど高収入となる。そしてその差は年々大きくなっている。かつては高校中退と修士号以上の年収は1:3.1だったが今では1:4.2まで広がっているという。


未婚者と学歴の関係についても興味深い結果が出ているそうだ。2004年のデータを見ると、高校中退者に占める未婚率はそれ以上の学歴を持つ人の倍になっている。大学など高等教育の場は結婚相手を見つける機会を提供していることが分かる。


Hout教授はプレゼンの冒頭で米商務省が1947年に放送した"Education is a good business"というテレビCMを紹介した。高学歴者の多い街では「多くの人が買い物をするので経済が活性化して、住居も立派」とCMは謳い上げる。買い物中の女性を映した映像と共に「洋服を買う時のカラーコーディネートにも教育が役立ちます」というナレーションが流れると、教室は笑いに包まれた。


何とも滑稽なCMだが、これは当時、高等教育の重要性が今ほど認識されていなかったことの現れだ。今では大学はアメリカの誇る一大産業になっている。トップ校には世界から一流の学者が集まるし、日本ではさほど有名でない大学にも、目を見張るような立派な設備を持っていたり、一流誌に論文を書く研究者がいたりする。学者を目指さない人でも博士号を持つ人が珍しくない。


60年前に米商務省が目指した通りの社会になったわけだ。100年単位でものを見ると、人々の価値観の変化が見えて面白い。いわゆる社会常識というものが「変わりうるもの」だと分かる。