9月から連れ合いがカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology: Caltech:写真)で研究員をするので、引越し準備を手伝い、彼の新しい上司に挨拶した。
新ボスはメカニズムデザインで世界一有名な研究者。大物なのに威張ったところがひとつもない。「あなたの研究補助にどのくらいの時間を割いたら良いか(自分の研究にどのくらい使って良いか)」と尋ねると「『あれをしろ』と押し付けたくない。君はどうしたい?」という返事。「人は君が何時間費やしたか全く気にしない。input(研究に何時間費やしたか)でなくoutput(良い論文を書くこと)を見るものだ」という言葉に、研究職は究極の成果主義であるとをあらためて実感する。
良いメンターは業種を問わず同じ要素を持つ。この教授と私が出会った良い上司には共通点があった。励まし上手で正論を言ってくれるのだ。キャリア相談にも即答。「君は○○して××すべき。そして僕は▲▲してあげられる」と明確である。横でやり取りを聞いていた門外漢の私にも、彼が理想の上司であることが分かった。
お昼をご一緒したのだが、自分でオーダーを取っちゃうしウェイターがコーヒーをこぼしたらさっさと始末する。教授がそこまでしなくても・・・ということまで気のつく親切な方であった。お礼を言うと「それがCaltechだから・・・」と少し嬉しそうに答えた。面倒見の良さが信条のようだ。
2時間弱の会合後、連れ合いの様子を見て、良い上司がいかに部下のモチベーションを上げるか目の当たりにした。
ところで、パサデナ市は高級住宅地として知られる。空港からシャトルバスで向かう途中、貧しい地域は一面砂色だがパサデナに近づくと急に景色が緑に変わる。バスに同乗していたおばさんはゲートで囲まれた住宅地に帰っていった。大学周辺の住宅地にはセキュリティーの立て札があるし「怪しい人を見たらすぐ通報します」と書いてある。家賃相場も高め。金持ちだけが安全で綺麗な地域に住めるアメリカの一面を象徴するような地域である。