今朝は地域問題に関するセミナーに出席。

私が住んでいるアナーバー市を含むワシュナウ(Washtenaw)郡の現状について外部機関が審査、結果リポートを見ながら住民たちが話し合った。基調講演をしたのはアナーバーへの知識集約型産業誘致を手がける機関・SPARKのマイケル・フィネー氏。これまで、ミシガン州ニューヨーク州の都市の企業誘致や経済開発で活躍、最近はグーグルの誘致でも手腕を見せた。

ヒューレット・パッカードが生まれたカリフォルニア州パロ・アルト、デルが生まれたテキサス州オースティンと同じようにアナーバーも高付加価値産業が集まる資格を備えている、というのが彼の主張。いずれの地にもトップレベルの研究機能を持つ大学があるためだ。2010年までに知識集約型企業を今の2倍に、雇用を3倍にするという目標を掲げている。

講演の後はリポートに基づき住民たちの話し合いが行われた(写真)。テーマは5つ。経済、教育、健康、環境、地域の連帯だ。リポートはパネルになってテーマごとに掲示されており、住民は関心分野ごとに分かれてディスカッションしていた。

同じ郡内でも街や村ごとに失業率や犯罪率、世帯収入がかなり違うのが興味深い。例えばアナーバーの住民は郡内で一番豊かで世帯年収の中央値は8万6797ドル(約1041万円)に上る。クルマで約30分離れたイプシランティという街は郡内で最も世帯年収が低く2万8610ドル(約343万円)。差は実に3倍になる。こうした数字が全て表やグラフになって公表されているのも私の目から見ると新鮮だった。日本で同じようなことをやったら「差別のもとになるから良くない」と批判されそうだ。

話し合いの進め方も、一風変わっていた。リポートの結果について意見を言い合うだけでなく「この審査リポートに欠けている要素があれば話してください」「どんな数値を知りたいですか」といった具合に、審査の視点そのものを住民にメタにチェックさせていた。最後には出揃った課題に各人で優先順位をつける。行政サービスや社会問題については言いっぱなし、批判しっぱなしで終わりがちだが、ここには良い意味で個人のコミットメントを問う雰囲気があった。

全体には感心したが、唯一、私が違和感を覚えたのはアジア系が私1人だけだったこと。200人余りの参加者には女性も男性も白人もアフリカ系もいたが、アジア人はゼロ。もちろんこの集まりは一般公開されており、誰でも参加できる。ミシガン大学のキャンパスにアジア人がたくさんいるし、アナーバー近郊には日本の自動車メーカーがあるからビジネスマンや家族も住んでいる。本気でグローバル企業を誘致したいなら、アジア系の人もコミュニティーに引き込む必要があると思う、アンケート用紙に書いておいた。