産んでみて実感したのが、夫の役割の大きさだ。


予定日前日に入院、弱めの陣痛が一晩中続いた。夫は私が痛がるたび、テニスボールで腰をマッサージしてくれた。生理痛を3〜5倍増にしたくらいの痛みが、腰骨のところに鈍い感覚で訪れる。すると夫はテニスボールで思い切り腰をさする。一晩に30回弱の陣痛が、15〜30分間隔でおとずれた。


翌朝、お腹の張りと胎児の心音をチェックするモニターをつけ、LDR室へ。LDRとは陣痛(Labor)、分娩(Delivery)、回復(Recovery)の略で妊婦が移動せずに一つのベッドで過ごせる部屋のこと。私が入院した病院は、ホテルの客室風のLDR室を備えており、それを利用した。


お昼前から陣痛は本格的に。痛みが強まる直前、モニターが示すお腹の張りの数値が高くなる。そろそろ痛みがくるな、と分かると夫は「がんばれ、がんばれ」と言いながら昨夜と同じくテニスボールで腰をさすってくれた。出産後にこのボールを見たら、酷使したせいでたくさんの毛玉ができていた。


その他、夫がLDR室に持ち込んだのは色々な神社の安産お守りたち。母や友人からいただいたり、自分達で買ったものをまとめて枕元のテーブルに並べ「これ、さわってみて」と応援してくれた。また、私が好きなお茶を自宅でペットボトル一杯に作ってきてくれた。


腰マッサージのたび「今、何時かメモして」と夫に頼み、陣痛が何時何分に起きて何分おきなのか記録してもらう。午後1時台には逃げ出したいくらいの痛みになり、午後4時半、無事に男の子が生まれた。


私にとって、夫立ち会いの効果は予想以上だった。子供も「私が産んだ」というより「夫と2人で産んだ」という感覚だ。1人だったら不安も痛みも、ずっと大きく感じたことだろう。


妊娠も、お腹の中で胎児を育てることも出産も、物理的には「女性にしかできない」。ただし、精神的には男性(配偶者)ができることは本当に大きい。