経済産業研究所(RIETI)の広報誌『RIETI High Light』(2008 SPRING)に書評を寄稿しました。


書評したのは『論争・日本のワーク・ライフ・バランス』(編者はシカゴ大学山口一男教授・慶応大学樋口美雄教授)という本で、昨年8月末に開かれた、RIETIの政策シンポジウムを書籍化したものです。


シンポジウムでは、経済学・社会学などを専門とする研究者たちが、それぞれの視点から意見をたたかわせました。日本社会にもっとワーク・ライフ・バランス(WLB)が必要という点について、発表者の考えは一致していますが、ゴールに至る過程については、少しずつ主張が異なります。例えば、ある研究者はWLB推進のために既得権益を見直し、経済競争を強化すべきと主張し、別の研究者は競争推進よりセーフティーネットの充実を優先すべきと語っていました。


研究者の発表をまとめた本ですが、ビジネスパーソンにこそ、読んでほしいと私は感じました。本書には、女性差別が経済的に非合理的であることを示した章があります。「女性活用」ブームの一方で、いまだに一部の日本企業には、差別的な慣行が残っています。保守的な上司を説得し社風を変えたいと考える人に、本書は論理の武器として役立つことでしょう。