子ども可愛いし、仕事もがんばろう、と思える本です。


最近、ママLOVEいちじるしく、トイレまでついてくる上、夫が寝かしつけようとしても「ママ…一緒に寝よう」「どうしてお仕事するの?」と言う、もうすぐ3歳の娘。そう言われると、もういいか、一緒に寝ちゃうか…と思って布団に入り、寝顔やっぱり可愛いなーと思いつつ、もう一仕事しようかな、という午後10時すぎです。


そんな働く親のよくある風景にぴったりの1冊。5名の心理学者が仕事と育児の両立について実体験を記しています。副題に「キャリアを積むこと、家族を持つこと」とあります。私は帯にも共感しまして、そこには「同時に重なる就職と妊娠、研究と育児、あきらめずにどう乗り越える?」とあります。私の夫は経済学者ですが、まさに就職と第一子誕生が重なったので、これは、うちの話だ!と思いました。


女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族をもつこと

女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族をもつこと


ところで、女性の働きにくさ、両立の難しさをマクロで語る言説のありようは、数十年前も今もほとんど変わっていません。だからこそ、なぜ無理なのかではなく、いかにして可能になってきたのか…の方に私自身は一貫して関心を持ってきました。


ただ、成功例はメディアに乗っかると、とたんにカリカチュアライズされたスーパーワーキングマザーの話になり、読んでいてげっそり…することも少なくありません。すごいけど、確かにすごいけど、無理というか、それは要するに男並みに働け…ということ?と思ったり。そんな「無理そうな」ワーキングマザー話を読み飽きた、でも、ロールモデルを探したい人には、ぜひ本書をお勧めしたいと思います。「女性研究者」とワークライフバランスの話ですが、専門職に就く方やキャリアトラックに乗っている方には共通項が多いでしょう。メインとなる筆者には男性研究者も入っていますし、女性研究者が記した章には「配偶者から」と題した夫によるコラムも収録されています。


両立について、女性の視点で困難を語ったり、それを聞いたりする機会は多々ありますが、そのたびに「夫はいるのだろうか。いるとしたら何をしているのだろう。妻がひとりで苦しんだり悩んだりしているのを、知っているのだろうか」という疑問を禁じ得ません。そんな私にとって、本書はまさに、そこを読みたかった…という視点がつまっています。


柔らかな文体ながら、きれいごとではなく日々の悩みを丁寧に描き、大好きな仕事と家族への愛を感じます。何より、自分で選択した人生を、自分の手で切り開いていく気概を持った男女による清々しさが印象に残ります。


本書に収録されている話題は、留学や在外研究に伴う遠距離結婚生活、男性が育児休業を取得した場合の経済的デメリットの試算、配偶者(夫)が在宅ワークを選択した事例など実に多様です。研究者にとっても、そして、アカデミア以外で専門職に就いている方、自分の仕事を大事に思っている、働く親のみなさんにも、ぜひお勧めしたい。そして何より、男女共同参画に取り組むすべての大学関係者に一読をお勧めしたいと思います。