東京アメリカン・センターで講演を聞いた。


スピーカーはジャーナリストのロナルド・ブラウンスティン氏(アトランティック・メディア カンパニー政治ディレクター)。キーとなる数字を散りばめ、分かりやすく解説してくれた。


民主党の候補者選びは資金・人員共に過去に例を見ない規模であったという。ヒラリーとオバマが今回集めた選挙資金は、かつてゴアが集めた資金の10倍以上にのぼるそうだ。投票した民主党員の数も今回は1.5倍という。ヒラリーとオバマの支持層は対照的だった。ヒラリーは高齢者・女性・ブルーカラーの票を約6割獲得。一方、オバマは高学歴の若者票を8割も獲得した。「ヒラリーは非常に強く、彼女を負かすことができたのは、過去の候補では夫のビル・クリントンくらいだろう。今回、負けたのは、それ以上にオバマ支持が広まったため」。


本戦についてブラウンスティン氏は、両党から過去に例を見ない良い候補が出た、と見る。以前、雑誌でマケインのインタビューを読んだが、筋が通っており、いわゆる「まっとうな保守」という印象を受けた。素人目に見ても、アメリカをきちんとした方向に戻してくれるような気がする。


最も印象に残ったのは、ブラウンスティン氏が講演の最後に披露した、オバマ支持者とヒラリー支持者のエピソードだった。ディナー代を節約してオバマに寄付する大学教授夫妻。カリフォルニアからテキサスまで、遠路はるばるやってきてボランティアで個別訪問しヒラリー支持を訴える大金持ちの女性。確固とした社会的地位にある人々が、自分が支援する候補者のためお金や労力を惜しまず、草の根で活動する様には心を打たれた。


こうした人々の動きこそが、大統領選挙の醍醐味だとブラウンスティン氏は締めくくった。この数年でアメリカの威信は失墜した、と見る向きもあるが、今回の大統領選挙を通じて国民は新しい未来を描こうとしているようだ。「希望の描き直し」ができるアメリカ人がうらやましく思えた。