今、日本で「ダイバーシティ」といえば、労働市場に女性が増えることを意味する。


人材に多様性があれば、色々なアイデアが生まれ、新製品やヒット商品につながる−−。企業がダイバーシティを推進するメリットはこのように説明される。


育児についても同じことが言える。母親だけでなく父親が積極的に参加する方が良いと実体験から分かった。


例えば子どもが泣いた時。オムツをチェックした後、私はすぐに母乳をあげていた。「母乳は欲しがるだけ与えていい」という小児科医のアドバイスに従ったつもりだが、知らないうちに対応がワンパターンになっていた。実際、母乳をあげれば泣きやんでくれるため、つい頼ってしまう。一方、母乳が出ない夫は、いろいろなやり方で子どもをあやす。抱いて揺すったり話しかけたり、手足を持って動かしたり、自分のお腹の上ではいはい練習をさせたり、おしゃぶりを使ってみたり。


ある日、気づくと、夫の方があやすのが上手になっていた。私が抱いても泣きやまないが、夫が抱くと機嫌がよくなる。


母乳という強力な武器を持つがゆえに、それだけに頼って別のあやし方を"開発"しなかった私と、強力な武器を持たないがゆえに、代替手段を発展させてきた夫。この構図は日本企業の労働実態とよく似ている。家庭責任を負わず、長時間労働できるがゆえに、残業と飲み会頼りで仕事をしてきた中高年男性と、育児や介護など家庭責任を抱え、長時間労働できない代わりに、仕事を効率化するなど別のやり方を考えてきた女性(最近は若い男性も同様だと思う)。


企業に女性が増えると、新しい視点が入るのと同様、男性が育児参加すれば、やはりこれまでと違うやり方が生まれると思う。数日前から「母乳以外の方法であやすようにしてみれば?」という夫のアドバイスを取り入れている。すると確かに、子どもが笑顔を見せてくれる機会が増えた。