Mommy Wars: Stay-at-Home and Career Moms Face Off on Their Choices, Their Lives, Their Families作者: Leslie Morgan Steiner出版社/メーカー: Random House Trade Paperbacks発売日: 2007/02/27メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 81回この商品を含むブログ (1件) を見る


「らしい」というのは、私自身はそれを感じることが少ないからだ。


友人には専業主婦もいれば、働く母親もいれば、独身もいる。私が子どもを持った後も働き続けていることについて、幸いにも、主婦の友人から批判されたことはない。また、色々な仕事をしつつも基本的には主婦であった私の母から、非難がましいことを言われたこともない。


さらに、夫も私が働くのを当然と思ってきたし、家計責任と家事育児責任を分け合うのは当然だと考えているし、それを日々実践している。


こういう環境においては、子どもを持った後も働き続けるのはごく自然のことだった。


だから、女性の社会進出という意味で日本より進んでいるアメリカにおいて、いまだに「働く母親VS専業主婦」という対立が存在することに、まずは驚いた。アメリカでは18歳以下の子どもを持つ母親の7割が働いている。すでに働く母親は多数派だ。


本書はタイトルにある通り、母親同士の対立を扱っている。より正確に言えば、働き続けるか否か迷う、母親の葛藤をさまざまな角度から描いている。


読み始めて驚いたのは、アメリカにおける働く母親と専業主婦の対立が相当あからさまに描かれていたことだ。ある日、路上でママ友同士がばったり出会う。片や専業主婦。片や仕事に復帰していた。その事実を確認するや、2人の間に緊張が走る。専業主婦は働く母に向かって「子どもがかわいそう」、働く母は専業主婦に向かって「ずっと家にいてつまんないでしょう」と言う。


お互いにとって、もっとも痛いところを突くシーンだ。普通は、口に出して言わないだろう。


こんな具合に、本書が提示する課題は、働く母親が抱える罪悪感をどう乗り越えるかということだ。編者を含む27人の働く母親が自身の体験を綴っており、その職業的背景や母親業への意識は多様である。


ある人は職場復帰するつもりだったが、復帰初日になって、ベビーシッターに子どもを預けるのが忍びなくなってそのまま退職。別の人は仕事をパートタイムに切り替えた。と思うと、これまでと変わらないペースで働き続け、家庭にも仕事にも満足して何ら罪悪感を覚えないという人もいる。


罪悪感という意味では、夫が高収入で自分の収入はなくても暮らしていけるという女性ほど、それを感じやすいようだ。ある人は毎日ベビーシッターに来てもらい、別室で仕事(執筆)をしていたが、大してお金にならない仕事を自己実現を目的にするために、泣いている子どもを人の手に渡すことについて、罪悪感を抱いていた。


私がこれまで読んできたアメリカのワーク・ライフ・バランスを扱った本の多くは、母親も父親と同じように昇進を重ねるべき・・・という前提で書かれていた。それと比べると、本書はキャリアより育児に偏っているように感じた面はある。育児が母親だけの仕事であるかのように読めて、保守的に映る面もなくはない。


ただ、まともにキャリアを追求したら週60時間、70時間(1日12〜14時間)働くことになる社会において、真に子どもと共に暮らそうと思ったら、週30時間程度のパートタイムが現実的な線かもしれない。執筆者の多くが出版業界で働くライターや編集者で、少なくない人が在宅勤務をしていたことも、私には興味深かった。


最も印象的だったのは、通信社で国際報道に携わった後、会社を辞めてフリーになり、4人の男の子を育てたIris Kranshowの記事(p324)だ。

ロックスターや会社の社長、国王や王妃、テレビスターにもインタビューをした。でも、過去の輝かしいキャリアや著名人たちの名刺の束にも関わらず、もし私が85歳になった時、人生最良の時はいつかと聞かれたら、小さな子どもを育てた日々を一番にあげるだろう。


私もそう思う。