慶応大学で開かれた、オックスファム・ジャパンの格差是正に関するシンポジウムでお話しました。



オックスファムが調査し、ダボス会議に提出したばかりという、各国の格差是正の取り組みを定量評価しランキングした報告書の発行記念イベントです。


基調講演をした井手英策先生のお話では、日本人の9割が中流意識を持っており、高所得層と低所得層の税負担が軽い、と思っている、ことを知りました。早い話が「自分ばかり大変な思いをしている」と考える人がたくさんいる。困難な状況に置かれた人の訴えを「こっちの方が大変」と言ってつぶすような言説が目立つのは、みんな自分が被害者だと思っているせいかもしれません。


私はいつものようにジェンダー視点でお話したのですが、最もインパクトがあったのは、オックスファムの森下さんが見せてくれた、こちらの映像でした。


ベトナムの30代お母さん。1歳の赤ちゃんがいますが、夫が働けないのでバスで34時間もかかるグローバル・アパレル工場で働いています。子ども達にはたまにしか会えません。彼女は靴を作っていますが、時給120円で、1カ月働いても、その靴を自分の子どもには買ってやれない、と言います。


こういう話は、ずいぶん前に搾取工場としてナイキが批判された頃から、そして少なくないグローバル企業が、児童労働とセットで問題にされてきました。解決するどころか、拡大しているように見える、こういう問題を目にした時、国内の格差の話をどう考えればいいのか、よく分からなくなる


収入がさして多くなくても、そこそこの暮らしができるとしたら、それは買っているものが安くなっているから。それを作っているのは、この動画に出ているような外国の人であるわけです。この構造において、先進国の多くの人は「自分は格差社会の被害者だ」と言っていられない。


国内問題を扱うリベラル系・左系の知識人は、こういう構造をどう捉えるのだろうか。私は自分ができることとして、就職した時からプラン・ジャパンに寄付しているのですが、本当に洞穴に住んでいる子とか、支援がなかったら女子は10代で結婚、男子は兵隊という村があったりします。同じ格差といっても、国内だけを見るときと、国内外両方を見るときで、ぜんぜん違うものが見えてきます。