著者はヒトラーのもと、軍需大臣を務め、戦後ニュルンベルク裁判で20年の刑を科された。もとは建築家であり、ナチスの功績を建築の形で何世紀も残したかったヒトラーに気に入られて大臣に登用されている。
少ない関連の記述は「知らなかった」が「知ろうとしなかったことに責任がある」としている。また、技術者として、技術が悪用された結果の惨劇を目の当たりにした意思決定層として「世界が技術化されればされるほど、均衡を保つためには個人の自由と各人の自意識が必要となってくるのである」と記す。
本書に関していえば、上巻の途中で読み続けるのに飽きてしまった場合は、読むのをやめて下巻の最後の方にとんでほしい。著者と面識があり、その人格に心酔していると思しき訳者の解説と、1980年代以降の研究をもとに、著者の偽善・欺瞞を厳しく批判する比較的新しい解説のコントラストに驚くはずだ。