早稲田大学「ウーマン・キャリアクリエイト講座」でお話をさせていただきました。
テーマは「女性のキャリアの作り方」、仕事と育児の両立についてです。
話したこと(ざっくり)
就労意識が高いとは言えなかった学生時代を経て、たまたま大学の先輩に話を聞いたことがきっかけで入社試験を受けて、作文に本音を書きまくって今の会社に入り、記者・編集者として4つの雑誌を担当してきました、という仕事の話。やってみると予想外に仕事は面白く、熱心な上司に恵まれて思ったより長く会社勤めが続いてます、という本心を話しました。今の学生さんの方が、私よりはキャリアについて真剣に考えているはず。
働きながら子どもを持てるとは、当初は思っていなかったけれど、世の中はどんどん進んでいき、取材先などから良いアドバイスを受けたりして、今に至る…。とあらためて考えてみると、職場についても夫についても「運が良かった」ことを実感します。留学についても然り。勧めてくれた上司がいたり、夫が一足早く渡米していたり、調査してみたいテーマが見つかったりと、好条件が重なりました。これも学生時代は予想していなかったことです。
「保守的な男性を変えるには?」
いただいた質問で一番多かったのが「どうしたら男性の意識を変えられるのか」というもの。「俺が稼ぐ」意識の強い人は家事育児をしないから、共働きで子育ては無理。どうしたらいいのか。「女性も働いたらいい」とは言うものの、自分が家事育児をするつもりはない。どうしたらいいのか…といった感じです。
私自身は大学1年の時から付き合っている今の夫と、そのまま一緒になったので、政治社会問題に関する考え方が合うことはよく分かっていたものの「結婚・出産後に私が働き続けるべきか」なんてことについて話し合ったことは、なかったのでした。そもそも、私が働き続けることがあまりに当たり前で、議論する気が起きなかった、と言った方が正しいかもしれません。
今や共働き子育ても4年目に入り、家事育児を当たり前のように半々で分担し、お互いが忙しい時は、サポートし合うのが当然。私も家計に彼と同じ額だけ入れるのも当然と思っています。家庭責任も家計責任も対等に分かち合うことを、あまりに当たり前に捉えてきたので、果たして今からそういう状態を構築するには、どうしたらいいか、しかも相手の男性にその気がない場合は?と問われると、とっさに良い答えが浮かびませんでした。
一晩考え、夫とも話をして自分なりに答えが出たので、ちょっと記しておこうと思います。
保守的な男性たちから「好かれない覚悟」はありますか
一言でいえば「女性が本当に仕事と育児を両立し、将来の夫に家事育児をやってほしいと思うなら、日ごろからそういう発言をしておく方がいい」ということです。ちょっと厳しい言い方をすれば「保守的な男性ばかり寄ってくる場合、女性自身が何かそういう人を寄せ付ける発信をしている可能性がある」ということ。(たまに、すごく美人で「トロフィーワイフが欲しいマッチョ男性」ばかりに言い寄られて困ってる人がいますが、まあ、少数派なので置いておきます)
私が通った大学は女性比率が2割台でした。自然と友人は男性の方が多くなります。男子学生の就職状況はかなり恵まれていたので、彼らの多くは「良い企業」に入り高収入となります。つまり私の大学時代の男友達は、専業主婦を養う経済力を得られるような人々だったのです。
なぜ女役割を押し付けられなかったのか
勢い、発言はコンサバティブになりがちですが、振り返ってみると、学生時代の私に対して「女性は家庭に入るべき」とか「僕は結婚したら妻には主婦になってほしい」と言う人は、ひとりもいなかった。もちろん、すでに今の夫と付き合っていた私は、彼らから見て「妻候補」ではないため、こういう話にならなかったのかもしれません。ただ、親しい友人やゼミの仲間と飲みに行って、恋愛話をする中でも、女性に対して伝統的な女性役割を求めるような発言を、彼らは少なくとも私に対しては一切しなかったということです。
当時の男友達の多くは結婚し、配偶者は専業主婦になり育児をしています。独身の人もいますし、DINKSの人もいます。私のように共働きで育児をしている人は数えるほど、年賀状のやり取りから推察するにたぶん2人くらいです。
では、彼らが私に自分の価値観を押し付けてこなかったのはなぜか。それは、私の言動を見ていて「こいつはこういう奴」と分かっていたためでしょう。下手に保守的な発言をしたら全力で反論してくるのは火を見るより明らか。
そういえば一人だけ、あえて「女性は○○した方がいい」と挑発してくる男友達がいました。ある時、教授同席の飲み会で、コンサバ発言をした彼に対し、私がガーッと言い返すと、ほとんど漫才のようになってしまいました。先生が笑いながら「こりゃ、れんげの勝ちだなー」などと言った記憶もあります。ちなみにこの先生は経済界でよく知られた方で、メディアを通した発言は結構保守的だったりします。
大学1年の時と3〜4年の時に入っていたゼミを思い出しても、女性が何か「女の仕事」をやらされた記憶はありません。男女対等に議論して終わったら夕食&飲みに行く。3年生の時は、女性の先輩も一緒でしたが、賢くて美しくて強い先輩たちだったので「女は○○すべき」などということは、思いつきもしなかったのではないでしょうか。
皆に好かれようと思わない
今も学生時代の男友達の数人とは、仕事半分、雑談半分でやり取りしています。「会社辞めたくなったー」なんて愚痴ると的確なアドバイスをくれる彼らは、決して「家庭に入ればいいのでは」などと言いません。この点は、夫と全く同じです。私の仕事を見て連絡をくれる男友達もいますし、子連れで会ったりすることもありますし、夫と共通の友人も多いのですが、私はあくまで私であって、夫の付属物とはみなされていないのでした。
あらためて「良い友達に恵まれたなあ」と思います。たぶん、彼らは私が通った大学の中では多数派ではないでしょう。そして、組織に頼らず仕事上では個人として活躍している人が多いようにと思います。こんな風に考えてみると、自分にとって何が好ましくて何が嫌か、常日頃からはっきり意思表示をしていると、そもそも嫌なことを言う人は、友人としては近寄ってこないし、そういう中から恋愛に発展する相手がいるなら、それは当然、将来をともにする上での価値観も一致するのではないでしょうか。
だから、女子学生のみなさんに言えることは、女役割を押し付けられるのが嫌なら「好かれるために女を演じる」のをやめるべきということです。そうすると「女らしい女」を好む男性は自然に離れていくはずです。それが本当に自分が望むことなのか、じっくり考えてみると良いかもしれません。
追記:
もうひとつ思い出した。質問に出てきた「私の周りの(保守的な)男子像」と、私自身が仕事で知り合った早稲田卒男性のギャップが大きくてびっくりしました。
もともとマスコミには早稲田出身者が多いのですが、私の周囲にもたくさんいます。たとえば、私が書いた本について、非常に励まされるお手紙をくれた元上司。そして、第二子妊娠を報告した時に気恥ずかしくなるくらい、ストレートに祝ってくれた元上司。彼らはいずれも親会社のエライ人です。
あと、男性の先輩たち。主婦の奥さん以上に育児を一生懸命やって子どもに愛されてる人もいるし。原稿を丁寧に見てくれたり、女抑圧文化について私がガーッと怒るのをよく聞いてくれた先輩もいるし。「こういう面白いネタがあるよ〜」とよく教えてくれる人もいるし。
こういう男性上司・先輩がことごとく早稲田出身なので、私の中ではイメージよかったのです、早稲田男性。彼らは少数派なのかもしれないけれど、こういう人たちが「いる」ことを踏まえると、どうしたら接触機会を作れるかよく考えて、自分の行動を見直すのが手っとり早いんじゃないかと思います。よく言われるように、他人と過去は変えられないけど自分と未来は変えられるので。