The Time Bind: When Work Becomes Home and Home Becomes Work
- 作者: Arlie Russell Hochschild
- 出版社/メーカー: Picador Paper
- 発売日: 2001/04/01
- メディア: ペーパーバック
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執筆者は社会学や女性学を専門にする人が多いためか、働くことを基本的には苦痛と捉えているようだ。ビジネススクールやコンサルタントが書いた本も読んでみたら、こちらは仕事そのものを悪いこととは捉えていないものの「いかにして長時間労働を減らしてビジネスパーソンを家庭に返すか」という問題意識で書かれている。
家で待つ家族の立場からすれば長時間労働は迷惑だけれど、職場に長くいる本人が嫌々働いているかというと、必ずしもそうではない。同僚と雑談しているうちに新しいアイデアが浮かぶこともあるし、仕事がうまくいかない時に愚痴とも報告ともつかない話を人に聞いてもらうと気分がすっきりする。夜中に会社の近くで飲みながら上司に説教と励ましの中間のような話をされて勉強になったことも数え切れない。
これらは"日本企業に特有な"コミュニケーションのあり方だとして批判されることが多いけれど、カウンセリング効果は絶大だ。会社が特別に予算をつけてカウンセラーを雇わなくても、問題が自然と解決されていくから合理的だ。皆がわき目も振らずに働いて、終業時刻になったらさっさと帰ってワークライフバランスを実現しても、それで本当にハッピーになれるのだろうか。
こんな疑問に答える本を見つけた。カリフォルニア大学バークレー校のアーリー・ホックシールド教授の『The Time Bind』。あるFortune500企業を数年にわたり調査、役員から時間給で働く工場労働者まで130人へのインタビューと、6家族への密着取材を元にまとめてある。
調査対象となった企業は先進的なファミリー・フレンドリー施策で知られる。社員の3分の1と管理職の25%が女性だという。インタビューから浮かび上がるのは、恵まれた環境とはいえ、やっぱり仕事と育児の両立は大変なこと、と考える女性社員たちの姿だ。まあ、これは予想通り。
面白かったのは、あらゆる場面で社員が「家より職場の方がリラックスできる」と話していることだ。著者は、この会社がファミリーフレンドリー施策を進めた結果、居心地がよくなり、そのため社員にとっては家庭より職場の方が楽しく感じられるようになったのではないかと推測している。どれもこれも日本企業に当てはまる話で、とても面白かった。