アメリカでダイバーシティといえば、性別や人種だけでなく同性愛者への配慮も重要だ。


普段の生活は寮と食堂と教室をぐるぐる回っているのだけれど、一歩外に出るといかにもアメリカ的な出来事に出くわす。例えば同性愛。


先週末に出かけたフィラデルフィアでは、街を歩き始めて最初に目に付いたのが「Philadelphia Gay News」(写真)という週刊のフリーペーパーだった。


記事は同性愛者の利害に関係があるものに絞られている。日本でも何度か耳にした同性愛結婚を認めるか否かについての裁判結果、HIVに感染していることを隠して性交渉を持った人が訴えられたケース、州内を走る鉄道が1週間有効の乗車券に性別を示すシールをつけさせることについてカスタマーサービスに抗議の電話をした時のやり取りが書かれていたり。アンチゲイを唱えるキリスト教保守派の動きもカバーしてあった。


面白かったのは、同性愛者が単なる弱者ではないような印象を受けたこと。もちろん、差別がもとになった暴力事件もあり、依然として少数派であることに代わりはない。けれど、州の内外で起こるさまざまな出来事に対して、抗議したり意見を表明することで、同性愛者が自らの手で社会を変えていこうとする前向きな姿勢を感じた。乱暴な言い方になってしまうが、日本では少数者自身が何をできるかが語られることがあまりなく、被害者意識を強調しがちで結果として「どうせ社会は変わらない」というネガティブな気持ちを持つことが多いように思う。


私自身は同性愛問題にはそれほど関心がないが、少数派の権利を主張する方法としてこの新聞のトーンは参考になるなと思った。例えば普段の取材テーマであるワーキングマザーについて書く際、今、足りないものについての不満だけでなく、どのようにモノを言えば社会が変わるのかを具体的に考えるといった具合に。


この新聞の収支構造も興味深い。フリーペーパーで広告が満載。テレクラみたいな広告が大半だったが、同性愛カップル向けに養子縁組や人生設計の相談に乗る弁護士やフィナンシャルプランナー、信者に同性愛者を受け入れる教会の広告なんていうものもあった。